阪神センター評論 8がけ社会・神戸の未来
8がけ社会・神戸の未来
なぜかしらこの7月末から、「斜陽激しい天下の朝日新聞」の1面~2面を貫く大型企画が始まっている。一つは「百年―未来への歴史」という「8月平和企画」の一種。8月3日までの3回は、これまでのように8・6ヒロシマも含め「戦争の悲惨」を追うのではなく、第一次大戦から近代100年の歴史をたどり、世論(市民)と民主主義とマスコミの責任も問うものだ。特に8月2日の「持たざる国、戦前への逆戻り」では、各国比較のGDP比率は「持たざる国」と言われた1920年代(そのため「満蒙は日本の生命線」と煽った)とほぼ同じ。途中1990年には世界2位だったが、間もなく世界12位にとの予測がリアルに迫る。バブルがはじけ、08年リーマンショック以降は「先進国」から脱落し、市民の生活にも襲いかかる物質的根拠を感じずにはおかない。
かつて55歳まで所属していた政治党派では、「GDP1位と2位の日米の帝国主義争闘戦が世界大戦になる」(→内乱へ・自国帝国主義打倒)なる愚劣な「テーゼ」があった(「万年決戦」「世界戦争待望論」に愛想つかし程なく集団離脱)。それから15年、戦争はロシア-ウクライナ、イスラエルから始まり、やがて帝国の生き残りをかけてGDP下位の国が上位の帝国に分け前(植民地・勢力圏)の再配分を求めて、世界的規模の戦争になるのだろ。
さて8月5日からは1面~2面で「8がけの世界」、「タワマンやめた神戸の選択」として、いきなり地域社会の「限界」を論ずる。久本神戸市長が、三宮周辺再開発にあたり条例でタワマン禁止を打ち出した時、何を考えているのかと思った。その後神戸市の人口減は避けられず、大阪と人口の奪い合いはしない、三宮に近郊から人を集中させる意味はない、とも主張。併せて郊外の町(北区など)に定住拠点が必要などと訴え、開発一辺倒の維新・斎藤知事批判の急先鋒ともなった。
日頃政治運動を主にしてきた(沖縄、原発など)が、他方で経済生活の急速な困窮化のもと居住地の市議を囲む小規模な学習会も重ねてきた。ここでも中心地の駅前には意味不明の商業施設(スポーツ施設など)が激増するが、周辺は衰退の一方。保育所や地域施設・公共施設の統廃合が進み、コープの閉鎖まで進む。他方で身の丈に合わない高度救急医療施設や、市役所立て替えには巨額の資金をつぎ込んだ。
そんな折、本日の朝日2面には、①神戸市の産業・都市構造の変遷(100年前の神戸・新開地を軸とした日本一の工業都市=川重・川鉄・三菱・鈴木商店・神戸新聞も同系列、から、戦後は三宮中心の商業都市に変遷)②北区・三田をはじめ近郊住宅地域の盛衰(一時は日本一の人口急増市、今や急速な過疎化)が分かりやすく語られている。
特に三田市民病院と神戸市北区の民間病院の統廃合は、二転三転し、市長交代・市長不信任で大きな話題となった。三田市民病院が神戸市北区に移ることに、私も他市ながら移転反対を支持したが、その後は広域地域再生の中での移転もありかとも考える。また2面左上のミニコープが唯一の買い物拠点の地域では、消滅すると買い物難民になるため、「売上表」を掲示し住民・行政・コープ一体で「自分たちの生活は自分で守る」と活動しているという。実は阪急駅前1分にあったコープが売り上げ減で閉店したが、コープの委員たちや地域住民の訴えでこの8月再開する。関西各地で大型スーパーの隙間で、買い物難民急増に「とくし丸」という軽トラ移動販売が活躍している。地域の実情に詳しい私に40歳代の市議スタッフの女性は「とくし丸やったら、みんな助かるで」。
日本の経済弱体化が止まらない。先日のある学習会では、元シャープ勤務の人に「今はどうなってんの?」と聞くと「台湾資本に買収された」。そういえば関西資本の典型の家電、製薬会社は外資か消滅か。尼崎東端の神崎川向かいにあった製薬会社群は更地のままだ。「シャープもNECのように軍需産業やらんかったから潰れたんや」とは自嘲とも本音ともつかない反戦運動家の弁。
5年間43兆円の軍事予算と、武器の海外輸出で儲ける以外、日本の基幹産業は存続できないのだろうか。神戸は川重・三菱の企業城下町の道を再び選ぶのか。成長しないこと(8がけ)を受け入れながら、地域助け合いで公助を創り出すのか。市民運動・社会運動・政治運動も、その社会的基盤抜きに、発展はないだろう。何を基盤にどのような運動を作るのか、等しく皆に問われていると思う。
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