« ついに内閣支持16.4%、最低更新 悪夢の政権交代まじか | トップページ | 空飛ぶクルマ、大阪万博ではただの「デモ飛行」 »

2024年6月15日 (土)

転載 映画『ゲバルトの杜』批判(上)    

『未来』391号、392号『ゲバルトの杜』批判を、3回にわけ転載させていただく。

 

カクマルとの闘いを「内ゲバ」とする『ゲバルトの杜』
動労松崎明、盗聴・テロ部隊抜きのカクマルは虚像(上)
大久保一彦

5月末から代島治彦監督の映画『ゲバルトの杜~彼は早稲田で死んだ』が「内ゲバの真相に迫るドキュメンタリー」の名で上映されている。映画は鴻上尚史が脚本を書き、池上彰、佐藤優、内田樹らが出演し、重信房子氏もメッセージを寄せている。代島監督の基本的視点は、川口大三郎さんの虐殺に抗議する闘いを「内ゲバ」(の始まり)とし、暴力的闘いからは何も生まれないとするようである。また多くの識者・関係者の登場により、50年を経て今の時代の大学や若者を考える契機にはなるだろうが、70年安保・沖縄闘争の意義とカクマルとの「内ゲバ」発生の社会的背景には踏み込まない。早大カクマルは描いても、転向し国労解体・国鉄分割民営化を導いた動労カクマル・松崎明が総評を解体させこの国の社会運動を転換させたことにも触れない。
われわれ革命的共産主義者同盟(再建協議会=通称中核派関西派)は2007年革共同中央と決別した組織だが、対カクマル戦の一方の当事者として党首を奪われながらも闘いつづけ、カクマルの軍事的脅威をほぼ排除し、今やこの国を「再び戦前にさせないため」に岸田政権の大増税・大軍拡攻撃と闘うものとして、この映画による「内ゲバ」キャンペーンは看過できない。(以下の論は6月からの関西上映を前にしてのネット上の宣伝物によるもので、映画そのものへの論及は観てからにしたい)

(Ⅰ)川口さん虐殺弾劾・早稲田解放闘争は内ゲバではない

1972年11月8日、狭山闘争を闘う早稲田大学文学部2回生・川口大三郎さんは、当局(村井総長)と癒着し早大を暴力支配していたカクマルにより殺された。彼らは狭山を闘う者が中核派に見え、川口さんを拉致し数時間にわたるテロ・リンチで殺害した。これに対し川口さんの友人たち、早大の党派・無党派の学生は川口さんの非業の死に怒り、これを開き直るカクマルを数千人の決起で弾劾し、多くの負傷者を出しながらも闘い抜いた。しかし一度はカクマル執行部をリコールしたが、早大当局の庇護を受けたカクマルの白色テロルに制圧され、より陰湿な支配が続く。友人や文学部学生、早稲田大全学行動委員会(WAC)の闘いは社会の共感を呼ぶが(筆者をはじめ多くの人が早大に駆けつけた)、最終的には全国動員のカクマルゲバルト部隊に抑え込まれる。この1年余の闘いのどこが「内ゲバ」なのか。
また映画のあらすじには「リンチ殺害事件をきっかけに、各党派で内ゲバがエスカレート」とあるがこれも違う。ここには71年12月4日以前の「各党派で内ゲバ」(学生内の暴力抗争)と、12・4以降の「カクマルVS中核派+解放派」の対カクマル戦争とが意識的に混同されている。「100人を超す死者」の95%は後者=3者間での事で、それ以外は学生運動内の死でも個別に事情は異なる。
カクマルに殺されたという点では対カクマル戦かもしれないが、当事者早大生にとっては、一般学生の川口さん(知人に中核派がいた)が、カクマルに殺されたことを「内ゲバ」(どっちも悪い)と同列視し、早大カクマルの白色テロ暴力を容認するこの映画は許されない。
学生間の暴力的衝突が内ゲバと言うなら、右翼・原理研との闘いや、日大全共闘や明大学費闘争を襲撃した体育会との闘い(日大には後に理事長になる相撲部の田中英寿がおり、明大には原発推進のCMに出続けた野球監督・星野仙一がいた)との闘いもすべて内ゲバになる。監督もマスコミも、これを内ゲバとは呼ばないはずだ。
代島監督らは「この内ゲバへの恐怖が学生運動から遠ざけた」とするが、76年入学の早大で依然続くカクマルの暴力支配に「恐怖」を覚えても、中核派や解放派に「脅威」を感じたことはないはずだ。カクマルの暴力は中核・解放派や支持する人だけでなく、カクマルに異を唱える者すべてを敵とし襲いかかった。この事態は本映画の原作である元朝日新聞記者・樋口毅『君は早稲田で死んだ』に詳しい。発刊時これを読み、改めてより高度化されたカクマルの白色暴力行使に、十分対応できてなかった事を知り悔しさを覚えた。
代島監督らは多分「(カクマルも含めた)新左翼内部のゲバルト行使全体」を「内ゲバ」と呼ぶのであろうが、三派全学連内での暴力行使(この件については次に論じる)は多々あっても、対カクマル戦争以外には持続的な死者は出ていない。カクマルのテロは、早大反戦連合への今も語り継がれるリンチ、68年11月東大闘争さなか解放派への激しい暴力襲撃(100人規模で1週間)、69年1月東大闘争逃亡を全党派・全共闘から弾劾されるや、その暴力は全党派に向けられる。
もともと対立党派への権力弾圧を「チャンス」ととらえ、「他党派解体のための党派闘争」を組織路線としたカクマルは、69年4月の中核派・ブント最高指導部への破防法適用、11月の数千人の逮捕、71年11月過程で再度の破防法攻撃、数千人逮捕を、絶好のチャンスと捉え(カクマル議長黒田寛一は「今賀千安」の筆名を使った)、71年12月の中核派3政治局員への襲撃、12・4関西大学バリケード襲撃で中核派2人の殺害を機に、70年安保・沖縄闘争のさらなる発展を暴力的に襲撃・鎮圧する反革命としてカクマルが登場したのだ。
69年12月、11月決戦で全党派・各大学全共闘が数千人規模で逮捕され、機動隊に殺された岡山大生・糟谷君虐殺抗議人民葬すらカクマルは襲撃する。反撃で逮捕された中には法政大の糸井重里氏もいた。この種のカクマルの襲撃は各大学で頻発し、それゆえ「革マル派排除」は新左翼全党派(8派)・全共闘・反戦の共通確認となった。この事実を踏まえず、半世紀を経て映像で「内ゲバ」としてカクマルの暴力を擁護する意図は何だろうか。

(Ⅱ)動労カクマルの「暴君」松崎明になぜ言及しないのか

この映画を見た人はカクマルという組織の恐ろしさを改めて認識するだろう。しかしそれが早稲田・学生の抗争としたら、歴史全体を見る目がない。なぜならカクマルは70年闘争の爆発抑止(大学で左翼を装い襲撃し鎮圧する)以外に、動労カクマルという形で戦後左派の大母体=総評の解体のため決定的な役割を果たすからだ。すなわちカクマル=松崎による動労(動力車労働組合)乗っ取り、国労(国鉄労働組合)解体・国鉄分割民営化、そして総評の解体だ。
代島・鴻上という「遅れてきた青年」はそこまで関心がないかもしれないが、『日本左翼史・4部作』で戦後左翼を論じ、この映画にも登場する池上彰・佐藤優は今日の翼賛政治の原因に、総評が動労カクマル=松崎明により解体されたことをなぜ論じないのかだ。池上・佐藤らが発展を願った社会党は、中曽根内閣の「戦後政治の総決算」=国鉄分割民営化・国労解体・総評解体で一気に衰弱。
ゲバルトの杜=早稲田大で当局と癒着して盗聴・学内パトロール・自己批判=退学強要で白色支配したカクマルは、動労・国鉄でも大規模な盗聴・暴力で動労を乗っ取り、当局と一体となって分割・民営化の先兵となり国労を解体し(動労はJRに再就職、国労の大半は余剰人員)、「昔陸軍、今総評」はほどなく消滅し、その系譜をひく政党は30年後にはわずか3国会議員の社民党になった。
この動労カクマルとの闘いでも中核派・解放派は、松崎の右腕=松下勝高崎地本委員長や国労の破壊者=真国労の前田らを打倒し(100人を超す死者には国鉄・全逓の組合員が多数いる)、カクマルの弱体化を進めた。西岡研介『マングローブ』・『トラジャ』、と牧久『暴君』などには、松崎明が暴君として君臨し、国鉄改革3人組と癒着・抗争し、さらには多数の死者・海外亡命者も出したカクマル内抗争も詳述される。
カクマル本体の黒田議長を辞任させた松崎が、動労を「左派」から「コペルニクス的転換」し、その後松崎明はJR総連会長となりJRに君臨する。JR総連は旧民主党の枝野幸男に多額のカンパをし、元キャスターの小池百合子を集会司会者に呼んでいる。この時代、松崎は会長室に「日の丸」を飾り、勝共連合機関紙『世界日報』に10回も登場した。しかし、ならず者・カクマルを「先進国」の鉄道部門に抱える危険性をJR当局は認識し、松崎との対決路線に転じる。国家権力・警察は、警察無線を傍受するカクマルの白色テロ部門に、2000年の豊玉アジト弾圧以降、系統的に弾圧を加える。最終的には2010年の松崎の死を契機に、JR東労組の松崎支配は崩壊する。
この恐るべきカクマルの動労支配のカラクリを社会主義協会派の池上・佐藤は語らず、たかが動労となめていた(当初は労運研=反カクマルが多数だった)太田協会・向坂協会派は一戦も交えず動労を乗っ取られ、国労をつぶされ、少数派に追い込まれる。
『ゲバルトの杜』(早稲田)と『暴君』(動労)は、当局と癒着した運動つぶし・白色テロ行使のカクマルという同じ脈絡でなされた。
今日の「自由な言論空間」は、中核派や解放派が党首を暗殺され満身創痍になりながらもカクマル白色テロ部隊を粉砕した空間でなされているのだ。1972年なら、カクマルを少しでも批判する者は間違いなく第2第3の川口さんになっていただろう。(続く)

« ついに内閣支持16.4%、最低更新 悪夢の政権交代まじか | トップページ | 空飛ぶクルマ、大阪万博ではただの「デモ飛行」 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« ついに内閣支持16.4%、最低更新 悪夢の政権交代まじか | トップページ | 空飛ぶクルマ、大阪万博ではただの「デモ飛行」 »

2024年7月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      
フォト
無料ブログはココログ

最近のコメント

日本ブログ村