ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない
ミャンマー国軍兵士が続々と寝返り…!クーデター以降約15000人が民主派勢力に加わり軍政の兵力低下が止まらない
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国軍兵士の「寝返り」
軍政と武装抵抗勢力との戦闘が続き実質的な内戦状態にあるミャンマーで、正規軍の中で戦線離脱や部隊離反などによる脱走兵が増加し、その大半が敵対する民主派勢力「国民防衛軍(PDF)」に加わっていることが、ミャンマーの独立系メディアなどの報道で明らかになった。
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国軍兵士の「寝返り」ともいえるこの現象は、2021年2月に軍がアウン・サン・スー・チーさん率いる民主政府から実権を奪取したクーデター以来続く傾向というが、2023年になってその数はさらに増加傾向にあると指摘されている。
「ミン・アウン・フライン国軍司令官でさえ実際に国軍兵士の正確な兵力(兵士の数)を把握できていない」と言われるほど、最前線の部隊では定員数と実際の兵士の数に大きなギャップが生じているという
こうした深刻な事態に軍政は政府職員や自治体職員をリクルートして兵力不足を補おうとしているが、職業軍人ではない「動員された兵士」ほど寝返る傾向が強く、不足が補えない状況が続いている。
一方のPDF側は国軍兵士の投降を呼びかける運動を強め、武器や弾薬、軍用車両などを持参しての寝返りには報奨金を用意するなどと宣伝して国軍兵力の数的弱体化を試みている。
このような国軍の兵力低下は、PDF戦闘員や一般住民に対する空爆、民家放火や拷問、暴力や残虐な殺害行為、人間の盾としての利用などを激化させるという行動のエスカレートを招いているとされ、そこに国軍の焦燥感が如実に現われているといわれている。
過去4ヵ月で500人が離反
独立系メディア「イラワジ」が8月25日伝えたところによると、最近開催された軍政に対抗する民主派組織「国家統一政府(NUG)」の第28回閣議で、マー・ウィン・カイン・タン首相が「過去4ヵ月の間に約500人の国軍兵士が軍を離脱、脱走した」と報告した。この500人の中には大隊副司令官という軍幹部も含まれているという。
今年8月に入ってからだけでも50人以上が国軍を離れており、軍の兵力低下が深刻な問題となっているとの見方を示した。こうした動きは西部チン州、東部カヤー州、カレン州などでも報告され、兵士の部隊離反が全国的に起きているとNUGではみている。
NUGによると、2021年2月のクーデター以来、少なくとも15000人の兵士と警察官が寝返って民主派の「不服従運動(CDM)」に参加しているという。軍政側は兵士の死傷者や行方不明者、脱走者などの数字を明らかにしていないが、NUG側が指摘した数字はある程度実態を反映しているとの見方が有力だ。
寝返った兵士や警察官は「国民防衛軍(PDF)」に加わって軍との戦闘に参加するほか、単に逃亡して密かに暮らしているかのどちらかであるという。
こうした事態に軍政側は兵士を軍に引き留めるために、休暇の奨励、芸能人らによる部隊慰問、指揮官は兵士と共に食事をとりコミュニケーションを密にするなど、あの手この手の対策を講じているとされる。
これに対しNUG側は兵士や警察官に離脱を勧めており、武器や弾薬、航空機や艦船と共に寝返った兵士らには多額の現金を付与するという報奨金制度を設けている。
寝返った元国軍兵士の証言
「イラワジ」は8月26日、同月1日に入手したという軍の文書に基づき各地の部隊で兵員不足が深刻な問題となっていると指摘した。
その文書は北東部シャン州に拠点を置く歩兵114大隊から国軍上層部に報告されたものとみられ、少なくとも857人の大隊要員が必要にもかかわらず実際には132人しか兵士がいないことを訴えている。
また、その132人の兵士のうち基地防衛のために62人を残し、半数以上の70人が基地を出て最前線での戦闘に従事しているという実態も記述されている。
さらに別の文書では、シャン州の国境問題担当の大佐が地区総務部門関係者に対して警察官を除く全ての公務員の名簿を提出するよう要請したことが記されている。このことから兵員不足を緊急に解消するために公務員を民兵または予備軍兵士に転換することを州政府が計画していることが分かるとしている。
同じ26日に「イラワジ」は元国軍兵士であるテット・ミャット元陸軍大尉のインタビュー記事を掲載した。ミャット氏は2021年6月に軍を離反し軍政に抵抗する市民の「不服従運動(CDM)」に参加、以後抵抗勢力側に協力して現役の兵士や将校の離反、逃亡の手助けを続けているという。
ミャット氏によると「イラワジ」が入手し報道した文書は「本物と思われる」とした上で、「各大隊は毎月兵員数などの情報を上部機関に報告する必要がある。大隊は兵士の定員数が約800人なのだが、どこの大隊もその数を満たしていないのが実情だ」と述べて文書の信憑性とともに国軍の兵員数逼迫が事実であるとの見方を示した。
公務員を民兵や予備軍に採用
軍政が兵力不足を深刻に考えていることは近年、地方の行政機関などで働く公務員を軍になかば強制的に採用し、民兵や予備軍に編入して部隊に送り込んでいることに現れている、とミャット氏は指摘している。
臨時採用され兵士として前線に送られた公務員出身者などは、戦闘で生命の危機に直面した場合に容易に投降する傾向がみられ、それもまた兵員不足の一因として軍政の悩みの種となっているという。
公務員以外にも、地方の住民で食糧難や滞在場所のない人々を脅迫して採用するというケースも報告されるなど、軍の兵員不足の深刻さが浮き彫りとなっている。
公務員や一般住民からの臨時兵士の他、正規軍兵士の前線からの離脱者も多く、「先見の明がある兵士」や「民主化弾圧に疑問を抱く兵士」らが「抵抗組織からの誘い」などを理由に寝返る傾向があるという。
そしてミャット氏は「イラワジ」に対して、「70年以上の歴史があるミャンマー国軍がわずか(クーデター以来)3年の武装抵抗を打ち負かすことができないという事実」を直視する必要があるとの言葉で結んだ。
一般住民を逮捕し人間の盾に
国軍は最近、抵抗勢力PDFや国境周辺での少数民族武装勢力との戦闘の中で、兵力不足を補う策として、一般住民を逮捕して、人間の盾として利用する作戦を実行しているという。
8月25日、北部カチン州パカント郡にあるナントヤール村、カットマウ村、サインパラ村に約30人の兵士が夜陰に紛れて侵入し、村人ら約100人を逮捕、連行したという。
軍はその後、パカント村に進軍するに際し、逮捕した住民を人間の盾として最前線に立たせたり、地雷が埋設されている可能性のある場所を強制的に歩かせたりして兵士の犠牲を最小限にしようとする作戦をとっている、と抵抗勢力はみている。
こうした作戦は軍による苦肉の策であり、兵員不足を補う根本的な解決策とはなっていないばかりか、一般住民の反感を買って軍の立場を窮地に追い込む結果になっている。
住民を敵に回しても民主化抵抗勢力との戦闘を継続しなければならない軍政の焦りが背景にあるのは間違いない。
2021年2月のクーデター以来、軍政は全土での治安安定という目標を達成できず、今年7月31日に非常事態宣言を半年間延長したことで2023年内に予定していた総選挙も2024年2月以降に延期せざるを得ない状況となっており、ますます苦境に陥っているのが実情だ。
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