「岸田首相は明らかに変わった」“安倍元首相のイエスマン”からの脱皮
「岸田首相は明らかに変わった」“安倍元首相のイエスマン”からの脱皮
安倍晋三・元首相は父の晋太郎氏が率いた「安倍派」を復活させ、12月6日には新会長お披露目を兼ねた盛大な派閥パーティーを開催した。駆けつけた岸田文雄・首相が「岸田内閣をど真ん中で支えてくださっている。大変ありがたい」と挨拶するなどキングメーカー、いわば“令和の闇将軍”の座を不動のものにしたかに見える。
外交面でも、安倍氏は「台湾有事は日米同盟の有事だ」と発言して中国を挑発し、「状況が許せば李登輝・元台湾総統のお墓参りをしたい」と台湾訪問の可能性にまで言及するなど「反中国派の大立者」として存在感を発揮している。
だが、その意気軒昂な姿とは裏腹に、安倍氏は足元に大きな不安を抱えている。今後の政治を左右しそうなのが、岸田首相が面従腹背で“安倍離れ”を急いでいることだ。
岸田氏は首相に就任するとまず官邸組織を再編。安倍氏が創設した「一億総活躍推進室」「働き方改革実現推進室」「人生100年時代構想推進室」などをいっぺんに廃止して政策面で“安倍路線からの決別”を鮮明にした。
これまで「数の力」で自民党を支配してきた安倍氏と麻生太郎・副総裁との「盟友関係」にもクサビが打ち込まれた。総選挙直後、岸田首相がコロナ禍の銀座通いで落選した麻生側近の松本純氏を党内の反対を押し切って復党させたのはその布石の一つだった。
その後、岸田首相は麻生氏、幹事長に抜擢した茂木敏充氏と11月16日と11月22日の2回にわたって会談を開き(11月22日は松野博一・官房長官も同席)、「定期的に会合を開いて政権運営を話し合う」ことを確認した。今後は岸田派、麻生派、茂木派(旧竹下派)の3派が主流派を形成し、“安倍抜き”で決めていくということだ。岸田派議員が語る。
「第2派閥の麻生派、第3派閥の茂木派、第4派閥の岸田派が組むことで最大派閥である安倍派の1.5倍の勢力になる。もう安倍派に党内のヘゲモニーは握らせない」
さらに首相のライバルで安倍氏が持つ「総裁カード」の高市早苗・政調会長の出番も封じられた。
総選挙後最初の政治課題となった18歳以下の子供1人10万円支給をめぐる自公交渉がそれだ。与党内の政策調整は通常であれば政調会長会談を経て幹事長会談という手順を踏むが、今回は岸田首相の指示で政調会長会談を飛ばしていきなり幹事長会談で決着させ、茂木氏に花を持たせたのだ。
「ライバルの高市の出番は作らせないというのが首相の意向だった」(岸田側近)
高市氏は自公の合意内容に「たいへん不公平な状況が起きる」と反発したが、黙殺された。
そして安倍派の跡目問題にも手を突っ込んだ。
総選挙後の党役員人事では、安倍派の福田達夫・総務会長の下に総務会長代行として政治巧者のベテラン・森山裕氏、総務会長代理として小泉進次郎氏をいずれも「総裁枠」で起用し、若い福田氏を支えるシフトを敷いた。
「派内で安倍さんと対立するプリンス福田をサポートして“安倍から福田へ”と最大派閥の世代交代を促す狙いを含んだ人事」(自民党閣僚経験者)と見られている。
政治ジャーナリスト・野上忠興氏は一連の動きを「岸田首相は明らかに変わった」と指摘する。
「首相は総選挙を乗り切ったことで自信を持ち、“安倍のイエスマン”から脱皮した。自民党ではこれまで党を仕切ってきた麻生太郎、二階俊博といった長老たちが力を失っていき、世代交代が進む。首相はそれを促すことで、麻生、二階に支えられて長期政権を誇った安倍氏も旧世代と一緒に表舞台から消えてもらい、政治の転換を図ろうとしている」
安倍氏にすれば、最大派閥の領袖になった途端、岸田首相から“あなたの出番はもうない”と包囲網を敷かれたのだ。
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