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2021年11月 9日 (火)

書評 : 竹信三恵子著『賃金破壊』(旬報社) 関西生コン弾圧事件の過酷な事実と背景

●書評 : 竹信三恵子著『賃金破壊』(旬報社)

関西生コン弾圧事件の過酷な事実と背景

北健一(ジャーナリスト)

 

 「労働運動を『犯罪』にする国」という副題が示すように、本書は直接には、戦後最大級の労働組合弾圧である関西生コン事件を抉ったルポルタージュである。著者の深くていねいな取材は、関生弾圧を追いながら、「働き手を支えるたくさんのものが、静かに破壊されようとしている」(エピローグ)実態を浮き彫りにし、読み進むうちに背筋が凍る。

 本書は、関生支部に加入するふつうの組合員の「小さな話」から始まる。子どもたちを抱えたシングルマザーが自立できる労働条件は、いかに築かれたのか。関生支部を中心とする生コン業界労使の歩みの末に、賃上げも時短もシングルマザーの経済的自立も成し遂げられたことが腑に落ちる。

 多くの努力があって、大阪の生コン業者は大阪広域協組に、関連の6労組は関西生コン労組連合会に結集した。そうした大同団結で価格交渉力が上がり、生コン価格は3割がた上がった。増収を、生コン労働者らの賃上げ原資になる運送会社の運賃に回すという約束を守らせるため、関生支部は全港湾と共に2017年12月、ストライキに立ち上がる。

 ストの時点で、大同団結は綻び始めていた。広域協組は「ストは犯罪、関生を業界から一掃する」と呼号して組合を攻撃。組合員や、組合員が多い会社から仕事を干し上げる。広域協組執行部への疑問が再燃するなか、大弾圧の火ぶたが切られ、「業界の空気は大きく揺り戻されていった」。

 労使対立の先に刑事事件があった。より正確に書けば、不当労働行為の加害者をかばう形で警察が労使関係に介入した。その構図を本書は鮮やかに描く。


*竹信三恵子さんのネット番組

 セメント業界に炭鉱会社の労務管理が受け継がれていることや「ダブルスピーク」の指摘なども興味深いが、本書の白眉の一つが「影の主役としてのメディア」という章だろう。ネットにあふれた組合叩き動画が、月70万円で請け負われた「仕事」による事実は、自民党マネーを吸い込んで野党攻撃のtweetをする「Dappi」と酷似する。他方、産経新聞などを除く主流メディアは、弾圧をほとんど報じてこなかった。著者は、新聞記者だった自身の経験も振り返りつつ、「対抗報道の不在」が生じる背景にも切り込んでいく。

 労使関係を「刑事事件」に仕立てたのが関生弾圧ならば、刑事事件とされたものを労使関係に戻していくことが、屈せざる者たちの課題となる。それは、長い時間をかけて壊されてきた「賃上げ装置」を立て直していく課題に、まっすぐにつながっている。

 上野千鶴子氏は本書の「帯」で「労働組合が骨抜きにされてから、私たちは経営側にやられっぱなしだ」と書いた。関生弾圧はその象徴にも見える。

 だが、荒涼たる光景にもいくつかの芽吹きがあることも、本書には活写されている。報道の現場でも、労働委員会や国賠訴訟の法廷でも、そして職場でも。

 「賃上げ装置」をさらに壊そうとする政党が総選挙では躍進した。だからこそ、「関生的な労組へのニーズ」(エピローグ)は、むしろ高まっているのではないか。

 やられっぱなしに見えて、そうでもない。無理に作られた「刑事事件」は労使関係に戻せる。「やられっぱなし」は「やり返し」に転じられる。どこか魔女狩りにも、レッドパージにも似た過酷な事実とその背景を追った本書を閉じるとき、胸の奥に温かいものが流れる気がした。

*『賃金破壊』(旬報社HP)

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