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2021年7月10日 (土)

識者、独禁法抵触の恐れ指摘 自民若手は悲鳴 西村発言

 
 
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西村康稔経済再生相=6月© 朝日新聞社 西村康稔経済再生相=6月

 お酒の提供自粛や営業時間短縮に協力しない飲食店には金融機関経由で働きかける。そんな考えを示した西村康稔経済再生相の発言に、銀行や与野党から戸惑いや反発の声が広がった。

 「我々に監視役をやれというのか」。大手金融機関首脳は9日、取材に対しこう述べた。「資金繰りをどう支えるかが我々の任務。自粛要請が徹底されない現実への問題意識は理解するが筋が違うんじゃないか」と話す。地方銀行幹部も「自粛警察をしろというのか」と反発の声をあげた。

 資金繰りが苦しい店も多い飲食業界にとって、融資を握る銀行の意向は無視しにくい。「(銀行の)優越的地位の乱用と思われかねない。生き残りに必死で立場が弱い飲食店がどう受け止めるか、想像すべきだ」と別の地銀幹部はいう。

 新宿・歌舞伎町の雑居ビルに店を構えるバーの男性店主(39)は「自分の手を汚さずに『圧力』をかけさせようとしている。あまりに陰湿なやり方だ」と憤る。コロナ禍での借金は300万円近くに。前回の緊急事態宣言時から、要請に応じず酒を提供し続けている。客層は2軒目や3軒目としてやってくる人が中心で、酒がなければ成り立たない。「酒を出すのは生活のための『自助』。今回のやり口に手を貸す金融機関はいないだろうけれど」

 与野党からも疑問や反発の声が相次いだ。自民党幹部は「西村氏の発言を聞けば、酒屋や卸売業者は『けしからん』となる」、衆院若手は「選挙にマイナスだ」と悲鳴を上げた。立憲民主党の安住淳国会対策委員長は「言うことをきかない酒屋に『お金を貸すな』などと政府が言う権限は法律上どこにもない」と批判し、共産党の田村智子政策委員長は会見で「憤りを禁じ得ない」と述べた。

■識者「金融機関の営業の自由にも抵触」

 《飯田泰之・明治大准教授(経済政策)の話》

 お金を借りているという意味で「弱い立場」にある飲食店に対し、金融機関が営業内容に注文をつける行為は独占禁止法で禁じた「優越的地位の濫用(らんよう)」にあたる可能性があり、金融業界も反応に戸惑ったと思われる。

 貸したお金をいずれ返してもらいたい金融機関に対して、わざわざ回収が難しくなるようなことを促しているとも言え、金融機関の営業の自由にも抵触する。

 発言の方法も「金融機関にお願いをして、政府に忖度(そんたく)して動いてね」という姿勢で無責任だった。

 政府のコロナ対策は、営業時間の短縮や酒類の提供停止など飲食業界に集中している。飲食店の営業の権利に、ここまで介入するほどの実効性があるのかは疑問だ。明確な因果関係がないまま、ひとつの業界を悪者にしてしまった印象がぬぐえない。メディアにも責任があると考える。

 酒類を提供する飲食店は他業界に比べて個人経営など小規模事業者が多く、「政治力」が弱い。反論が政府に届きにくく、これまでも無理筋の要求がコロナ対策の名のもとにまかり通ってきた。

 ただ、今回は政治力の強い金融業界が絡んだことで、法的根拠の薄弱さがしっかり指摘されたということではないか。

 特に今年に入ってからは思いつきとしか思えない政策が時々ある。中長期的な補償の枠組みの提示がなく、短絡的な飲食店への命令が続いている印象だ。(小出大貴)

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