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2021年4月16日 (金)

安倍晋三前首相が「原発議連」顧問に

 
 
福島県内を視察する安倍晋三首相(中央)。原発事故から10年を経た今も日本のエネルギー政策は迷走している=福島県富岡町で2017年4月8日午前(代表撮影)© 毎日新聞 提供 福島県内を視察する安倍晋三首相(中央)。原発事故から10年を経た今も日本のエネルギー政策は迷走している=福島県富岡町で2017年4月8日午前(代表撮影)

 そこにいるのは、まさか――? 原発の新増設や建て替え(リプレース)を推進する自民党議員連盟の設立総会に取材で足を運ぶと、安倍晋三前首相の姿があった。議連の顧問に就くという。ちょっと待ってほしい。7年8カ月に及ぶ在任期間中、「一強」の名をほしいままにしてきた安倍前政権。退任してから議連の顧問になるくらいなら、どうして在任中にリプレースに取り組まなかったのか。

設立総会に原発推進派ズラリ

 12日、総会の会場となった国会内の会議室。新型コロナウイルスの感染対策なのか、間隔を取って席に座る約40人の自民党議員らと向き合うように、安倍氏が中央に座っていた。総会開催の案内文には安倍氏が議連に参加するとは書かれていなかったはず。思わず案内文を撮影した画面をスマートフォンで確認した。

 案内文は主に自民党を担当する記者が詰める記者クラブ「平河クラブ」に張り出されて告知された。呼びかけ人として額賀福志郎元財務相や甘利明元経済再生担当相、細田博之元幹事長ら、安倍氏と同様に顧問に就いた自民党重鎮議員が記載されているが、安倍氏の名前はない。

 安倍氏の横には甘利氏と細田氏のほか、議連の会長に就いた安倍氏に近い稲田朋美元防衛相、総会で講演する国家基本問題研究所の桜井よしこ氏ら原発推進派として知られる面々が並んでいた。この10年間、これほど明確に原発の新増設を打ち出した議連はない。会場後方には報道各社の政治部や経済部の記者らが数多く集結。関心の高さがうかがえた。

原子力に「しっかり向き合え」

 安倍氏にも発言の機会が回ってきた。「エネルギー政策を考える上で、原子力にしっかりと向き合わないといけない」。そう強調したが、ではなぜ自身の政権下で議論を活性化させなかったのか。この国のあるべきエネルギー政策を追ってきた記者としては、モヤモヤした気分になった。

 世間一般では、安倍前政権は「親原発」のイメージが強い。この発言にもそれほど違和感を持たないかもしれない。確かに、原発事故翌年の2012年に政権を奪還するとすぐに、それまでの旧民主党政権が打ち出した「30年代原発ゼロ」政策から転換。国のエネルギー政策の方向性をまとめた14年の「エネルギー基本計画」(業界では「エネ基」と略される)でも、原発について「可能な限り依存度を低減する」とはしつつも、「重要なベースロード(基幹)電源」と位置づけている。

 一方で、14年と18年に改定した現行のエネ基では「新増設」「リプレース」には踏み込んでいない。原発推進派の間では、既存原発の再稼働が進んでも、新増設がなければ数十年後には国内で稼働する原発はわずかになる。

首相辞任後に主張「まるで喜劇」

 安倍氏の顧問就任。専門家はどうみているのか。「安倍さんがリプレース推進議連の顧問? まるで喜劇ですね」。エネルギー政策に詳しい国際大の橘川武郎教授(エネルギー産業論)はこう評する。どうして喜劇なのか。橘川教授は「安倍政権が原発について実施したことは、あくまで再稼働の容認にとどまります。さらに意見の対立が予想される原発のリプレースについての議論は、むしろ経済産業省が望んでも封印してきました」と説明する。

 「『安倍一強』と言われるほど政治基盤は強固でしたが、宿願だった憲法改正の発議に必要な3分の2の議席数を意識して、関心が低いエネルギー政策では積極的に何かをしようとはせず、その場しのぎの政策に終始したわけです。それなのに、首相を退任したらリプレースを訴えるとは……。経産省の職員が一番怒っているんじゃないでしょうか」と話した。

 その経産省にも話を聞いてみよう。「びっくりしたよ。安倍さんが総会にいたんだって?」と驚くのはある幹部。「僕たちとしては新増設をエネ基に書き込むのは大賛成だけど、これまで新増設案を持ち込ませなかったのは誰だよ!と。正直、そう思いますよ」と複雑な思いだ。別の幹部も「首相を辞めた途端に……。じゃあなぜ自分でやらなかったんだよって。もう笑っちゃうよ」と話した。

 現在、講演活動などで「脱原発」を訴えている小泉純一郎元首相も首相在任中(01~06年)は脱原発を口にしていなかった。だが、小泉氏は東京電力福島第1原発事故をきっかけに考えを改めたと説明している。安倍氏の場合、首相を退く前と後で原発に対する考えに変化があったとは思えない。必要だと思うなら自身の政権下で打ち出せたはずだ。世論調査で反対が根強い原発議論を避け、立ち位置を曖昧にしたままやり過ごし、原発事故から10年が過ぎて、首相という重責から解き放たれてから改めて推進を打ち出しているのではないかと疑念を持ってしまう。

議連会長は稲田氏「できもしない脱炭素」

 議連の正式名称は「脱炭素社会実現と国力維持・向上のための最新型原子力リプレース推進議員連盟」。長い名称だが、要はエネ基が今夏に再び改定されるため、そこに原発の新増設やリプレースの方針を明記することを目指しているという。

 福島原発事故の前に国内にあった54基の原発は、原発に対する不信感が強まり位置づけが大きく変わった。事故後に廃炉が決まった原発は21基。残る原発は安全性が確認されれば最長20年の運転延長が認められるが、その場合でも運転期間は最大60年だ。

 議連は古い原発を廃炉にする代わりに新しい原発を建て、一定数を維持したい考えだ。安倍氏の後を継いだ菅義偉首相が昨年10月、50年に温室効果ガス排出の実質ゼロを目指す「カーボンニュートラル(脱炭素)」を明言したことも、発電段階で二酸化炭素を出さない原発の必要性を示したい議連にとっては追い風となっている。

 菅首相は昨年11月の衆院予算委員会で「原発の新増設について、現時点においては考えていない」と答弁した。だが、稲田氏は総会後の記者会見で「安全性を高めるためにも新しい原発のリプレースが重要だ」と語り、党内での議論を盛り上げていく考えを示した。さらに、「可能な限り、原発依存度を低減する」というエネ基の記述について、「できないカーボンニュートラルを世界に向けて約束したことになる」(稲田氏)とし、新たなエネ基で削除することを求める。安倍氏をはじめ、40人余りの自民党議員が参加する「リプレース議連」はさらに参加人数を増やしそうだといい、エネ基の策定作業が本格化する夏に向け、原発推進派は勢いを増しそうだ。

正面から原発議論を

 「スガノミクス」の物足りなさもあって再登板すらうわさされるなど、政界や経済界で影響力を保つ前首相の顧問就任は、推進派には心強いだろう。だが、これまで「原子力をはじめエネルギー政策について抜本的な議論を避け続けてきた」(橘川教授)にもかかわらず、退任からわずか半年余りで「原発推進」をむき出しにするとは……。

 総会後の記者会見で、当の安倍氏になぜなのかを問いかけようとした。だが、気付くと桜井氏の講演が始まる前には退席していた。記者に問い詰められたくなかったのか、実はそれほど思い入れがないのか。原発を含めたエネルギーの問題は、暮らしや経済活動の基盤をなすものであり、一人一人が自らの問題として考えることが必要だ。顧問に就任したからには、真っ正面から国民に向けて原発の議論を巻き起こしてほしい。【古屋敷尚子】

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