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2020年10月18日 (日)

実情がわかってきた日本学術会議への菅政権の「恐怖の人事介入」

実情がわかってきた日本学術会議への菅政権の「恐怖の人事介入」

任命拒否問題はどうなる(写真:西村尚己/アフロ)

政権側も巻き返しのキャンペーン

 日本学術会議の会員候補6名を菅首相が任命拒否したことが、いまだに大きな問題になっている。批判を浴びて政権側も巻き返しを図っているようで、学術会議という組織の問題点を指摘する論調もネットなどでは目立つ。学術会議に問題があるのならそれは改善すべきだが、それは今回の問題に対する議論のすり替えだろう。

 任命拒否問題の本質とは何だったのか。この間の報道を通じて様々なことが明らかになりつつある。ここで一度整理しておこう。

10月16日付東京新聞特報面。筆者撮影
10月16日付東京新聞特報面。筆者撮影

 菅首相は会見でうっかり、自分は6名が既に除かれた名簿しか見ていないと口を滑らせ、では誰が6名を拒否したのかと問題になった。6名を名簿から削除したキーパーソンは杉田和博官房副長官であるらしいことが報道で明らかになっている。これはこの問題を理解する重要なポイントだ。10月16日付の東京新聞が特報面で杉田副長官について詳しく取り上げており参考になる。

政権中枢で公安的手法を駆使する杉田官房副長官

 警察出身で警備・公安畑を歩んできた杉田氏は、「陰の総理」とか「官邸ポリス」などと言われ、安倍政権において公安筋の情報を活用し、公安的手法で危機管理を担ってきたとされる。今回の問題についても、前川喜平元文科事務次官が、以前も杉田氏から政権に批判的な人物の排除を要請されたことがあると暴露していたが、そもそも前川氏は2017年の加計問題の会見で、杉田氏から呼び出され、出会い系パブの件で警告を受けたことがあったと話していた。

 前川氏の出会い系パブ問題は、同氏が加計問題で告発をするのを抑えるために、読売新聞や『週刊新潮』に情報が流されたものだが、スキャンダルを使って不都合な人間を潰そうというのはまさに公安的手法といえる。今回の問題でも、学術会議の問題点なるものが、誤った情報を含めていろいろなところに流されているが、明らかに政権側から意図的に流されているものだろう。

マスメディアが真っ二つに割れている

 ネットではその政権側からと思われる情報がかなり流布されているが、新聞・テレビもこの問題を巡っては、産経・読売新聞の保守系と朝日や東京新聞のリベラル系が、紙面の扱いが全く違う。テレビでも、日テレ・フジとTBS・テレ朝とで論調が違う。これまでもマスメディアの論調の違いはあったが、今回は真っ二つに割れていると言ってよい。

 私はこの問題について先頃、毎日新聞のインタビューを受けており、それが下記に掲載されている。

http://nml.mainichi.jp/h/adnxaWdWfEho6Bab

学者の次はメディア 「理念なき暴走」止めるため今やるべきこと 

毎日新聞インタビュー記事(筆者撮影)
毎日新聞インタビュー記事(筆者撮影)

 

 その中で今の局面についてこう述べた。

《今はすごく大事な局面です。政権側は任命拒否を「これは決定事項だ」と言っているけれど、まだ事態は流動的です。さまざまな団体が反対の声を上げ、私が所属する日本ペンクラブも声明を出しました。今後もいろいろな動きが出てくるでしょう。今年5月、検察官の定年延長を認める検察庁法の改正案が国会で見送りになった時のように、世論が事態を動かすようになってほしいと思っています。

 菅政権は安倍晋三政権を踏襲したと言われていますが、今回の件で明らかになったのは、「強権的に物事を進める手法」を色濃く受け継いでいることです。安倍政権の時も、法案を次々と強行採決するなどひどいやり方をしたけれど、それでも安倍さんなりの国家観や理念があって、やっていることの意図がそれなりにわかった。もちろんその国家観や理念には全く同意できませんが。でも今、菅さんがやっていることは、いったいこの国をどうしようとしているのかよく分からない。「理念なき暴走」に見えて、ある意味で非常に危険だなという気がしますね。》

 発言の中で言及した日本ペンクラブの抗議声明は下記だ。

http://japanpen.or.jp/statement20201008/

日本ペンクラブ声明 「全員を任命すべきである――政府の日本学術会議会員任命拒否をめぐって」

任命拒否の狙いは何か

 菅政権の任命拒否の狙いは何なのか、インタビューではこう答えた。 

《◆もちろん、政権に批判的な勢力は排除する、ということでしょう。安倍政権がやってきたのと同じことですよ。官僚も政権の意向に反対する人は排除されるし、残った人も忖度(そんたく)するようになる。全体として官僚組織は政権の意のままに動くようになったので、次は政権に批判的な学者やメディアをどうにかしたいと考えているのでしょう。まず、自分の影響力を行使できるところから変えようとしたのだと思います。

 ――なぜ学者の世界が対象になったのでしょうか。

 ◆2015年に安保法制を議論していた時、学者の声が新聞などで大きく取り上げられました。国会では、与党側の参考人として出席した学者が「憲法違反だ」と指摘する場面もあった。学問の世界は独立しており、それぞれが学者としての信念に基づいて発言したのだと思います。しかし政権にとっては苦々しく、こういう勢力を何とか抑え込みたいと考えたのでしょう。》

『週刊文春』”恐怖人事”『サンデー毎日』”異端狩り”

 いくら菅首相でも、「政権に逆らう学者を排除した」とあけすけに言ってしまうと大反発を招くのは必至だから、「総合的・俯瞰的」と意味不明の呪文を唱え続けているわけだ。でも狙いが政権に逆らっている学者の排除であることは明らかだろう。

 

 例えば『週刊文春』10月15日号はこの問題を「菅『恐怖人事』」と見出しにうたって取り上げたが、記事で匿名の官邸関係者がこうコメントしている。

 「”恐怖人事”で霞が関を支配してきたのと同じ構図です。最近『政策に反対する者は異動』と明言したように、ふるさと納税に異を唱えた総務官僚をはじめ、多くの有能な官僚を更迭してきました」

 この間、安倍政権がやってきたこと、菅首相のこれまでの言動を考えれば、この見方は当然だろう。今回、『週刊文春』は地の文でこう書いている。

 「国家公務員である学術会議の会員が奉仕するのは、菅首相ではなく、国民全体に対してだ。まして学問には独立性や多様性が求められる」

 これはまさに正論だ。最近『週刊文春』は、先輩にあたる花田紀凱『月刊Hanada』編集長から、誌面が朝日新聞のようになってきたと頻繁に苦言を呈されているが、権力の暴走にチェックをかけるというジャーナリズム本来の姿勢が誌面にあふれていて頼もしい。

 雑誌ジャーナリズムで言えば、10月12日発売の『サンデー毎日』10月25日号が表紙に「菅政権の異端狩り」と大書し、この問題を特集している。「日本学術会議への人事介入は『レッドパージ』の再来である」という保坂正康さんの原稿や、作家の高村薫さんの「学術会議、任命拒否の暴挙、『説明しない』ファシズム」など、なかなか読みごたえがある。 

にわかに話題になった「中国千人計画」なるもの

 さて今回の任命拒否の狙いが、政権に批判的な学者を排除して、恐怖や忖度を学問の世界に植え付けようとすることなのは明らかだが、ここへきてにわかに話題になっているのが、「中国千人計画」なるものだ。

 学術会議が同計画に「積極的に協力」と、甘利明議員がブログに書き込み、事実無根と指摘されて訂正した。それで終わったかと思いきや、そう簡単ではない。10月15日発売の『週刊新潮』10月22日号が「日本の科学技術を盗む『中国千人計画』」という大きな特集を掲載している。

 そもそも「千人計画」なる言葉自体耳慣れないが、記事によると、自民党の山谷えり子議員や有村治子議員らが国会で取り上げるなどしており、右派の間では関心を持たれていたようだ。

『週刊新潮』10月22日号(筆者撮影)
『週刊新潮』10月22日号(筆者撮影)

 驚くのは、『週刊新潮』自身、日本で千人計画に関わったとされる学者に「その実態を探るべく、米中対立が激化の一途を辿る今年7月頃から接触を試みてきた」と書いていることだ。大きな取り組みをしているようで、次号でもその問題を取り上げるという。

 気になるのは、日本の学者に対するそうした視点からの関心が保守派の間で高まっていたとすると、どうもそれは今回の学術会議問題と無縁ではないような気がすることだ。

 菅政権の9名任命拒否は、直接的には政権に批判的な学者の排除ということだろう。でも問題の奥には、もう少し政治的背景があるのかもしれない。

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