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2020年9月 3日 (木)

今も授業再開の目処は立たず……コロナ大学生の悲惨な日常

 

 


 

実家で作品をつくる高橋さん。「最近隔週で通学可能になりましたが、作品づくりに集中できず意味がないと学生に言われてます」© HARBOR BUSINESS Online 提供 実家で作品をつくる高橋さん。「最近隔週で通学可能になりましたが、作品づくりに集中できず意味がないと学生に言われてます」

 授業ができない、サークルに入れない、バイトができない——ないない尽くしの大学生活に学生は悲鳴を上げている。「#大学生の日常も大事だ」のハッシュタグでも注目された”大学生の日常”とは?

連日孤独なオンライン授業。巣ごもりキャンパスライフ

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除され、はや3か月。会社や小中高校が再開するなか、取り残された状態にあるのが大学だ。

 文部科学省の調査によると、7月1日時点で国公私立大学などが対面授業を全面的に再開したのは16%、学内施設が制限なく利用できるのは15%にとどまっている。9月以降の後期授業も青山学院大学ではオンラインでの実施を決定し、今後も自宅にこもるような生活が続く大学生は少なくない。

「もう夏休みも終わるのに、同じ大学に通う学生に一人も会えていません。当然、友達もできてないです」

 そう話すのは、東京大学1年生の上原司くん(仮名・19歳)。岐阜県から学生寮に入って新生活を送るはずが、入学式中止をはじめとしてあらゆる機会が失われた。

「例年、入学式後に行われている先輩との交流会も中止となり、サークル勧誘もなければ学校行事の新入生合宿もなくなって、ちゃんと大学生活が送れるのか不安がどんどん大きくなりました。緊急事態宣言が発令されて授業がオンラインに決まると、感染リスクもあるし、親と相談して4月半ばには実家に帰りました。上京してまだ2週間の出来事でした」

 長くても6月には東京に戻れると思っていた上原くんだったが、実家生活ももうすぐ半年。学生寮の寮費4万5000円は、その間も払い続け、総額20万円を超えた。

「先輩や友人がいないので困ったことがあっても誰にも相談できず、履修登録は分厚い冊子を3日かけて読み込んで結構大変でした。一応、上級生主催でクラスのオンライン交流会があったのですが、全員初対面のオンラインの場に飛び込んでいく勇気がなくて参加できず……。こんな大学生活ものちのち笑い話になるのかなって思ってます。というか、そう思わないとやってられないです」

 1浪の末、都内の美大に入学した1年生の高橋華さん(仮名・20歳)は不満を露わにする。

「大学内に充実した施設があるから高い学費を払う価値があるのに、受験以来一度も大学に行けてません。ずっとオンライン授業のみで、その内容はパワポを読むだけ、本や動画の感想を書くだけ、作品もないのにパワポのプレゼンだけで評価されるという内容。学費を日割りしたら一日1万円で『こんな授業に高い学費を払ってるのか……』とバカバカしくなります」

コロナのせいで鬱病に。将来の夢も諦めることに

 コロナ禍で急変した大学生活に鬱病になってしまったという人も。都内の文系大学に通う4年生の伊藤秀さん(仮名・22歳)は、月8万円のバイト代と2万円の奨学金で一人暮らしをしていた。

「バイトは塾講師をしていたんですが、コロナの影響で塾が閉鎖し、3月に電話でクビを言い渡されました。4月になると、教職のため30単位取得しなくてはならない授業が完全オンラインになり、今までは出席のみでよかった授業が毎回2000字のリポートや小テストが出るようになって、課題が重くのしかかるようになりました。一日10時間以上パソコンで作業する日が続いて気が滅入ってしまい、5月に病院に行ったところ鬱病と診断されました」

 収入源がなくなり、課題漬けで精神的にも追い込まれ、さらに進路にも影響した。

「教員になりたくて教育学部に進学したのですが、教育実習がすべてオンラインになりました。実際に教壇に立たずに教員免許を取得できたところで不安だし、この状況下で教員を目指すのは避けたほうがいいとも思い、教員になる夢は諦めることにしました。でも、就活するにしてもコロナ不況で厳しいし、進路は今も決まってなくて休学を考えています」

 このように大学生を苦しめる大きな要因の一つが、経済的負担が大きい高額な学費だ。NHKの調査によると160の大学で学費値下げ署名活動が起こり「大学に通えないなら施設費を返してほしい」「オンライン授業なら授業料を半額にすべき」と訴える声が日に日に大きくなっていったという。だが、京都芸術大学など一部の芸術・音楽系大学を除き、ほとんどの大学が応じていないのが実情だ。その理由を大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は次のように語る。

「施設費は施設を使わなくても維持費がかかりますし、人件費もあるので、そう簡単に値下げはできません。コロナの影響が長引く、あるいは再発したときにその都度応じていたら、大学経営が危うくなってしまいます」

 今後、大学生を取り巻く環境は、さらに悪化する恐れもあるという。

「貧困に悩む学生が急増すると、ブラックバイトやネットワークビジネスに手を出してしまう学生も出てくるでしょう。前期はまだ持ちこたえていた学生も後期になって精神的・金銭的に苦しくなると、冷静な判断力が失われてしまいます。うまい話には裏があることを理解して自己防衛する必要があります」(石渡氏)

 海外でも大学の問題が指摘され、“ロックダウン世代”と呼ばれている。就職差別を招く恐れもあり、将来にも影を落としかねない。

小中高校は再開したのに、なぜ大学は通えない?

 SNSで「#大学生の日常も大事だ」のハッシュタグの投稿が話題となり、なかでも「小中高校や会社は行けるのに、なぜ大学だけ?」という不平等感に多くの共感の声が集まっていた。その理由を前出の石渡氏に聞いた。

「大学が再開しない理由は大きく3つあります。1つ目は規模の大きさ。大学は学生や職員など関わる人数の規模が大きいので、人の密集につながりやすい。2つ目は移動距離の長さ。地元に根づいている小中高校と違い、他県から電車で1~2時間かけて通う学生もいるので、感染拡大のリスクが高い。3つ目は学生の約半数が成人しているため、飲酒が可能であり、居酒屋など夜の街に出かける機会がある。これが企業であれば会食禁止などの指示に強制力がありますが、大学だと強制力があまり働かないからです」

 また世間の一部からは「大学生のツラさなんて大したことがない」と悩みに理解を示さない人もいたが、その理由は何か?

「今でこそ大学はしっかり授業に出て勉強しなければ単位が取れませんが、2007年に大学設置基準の改正がされるまでは、授業なんて受けなくても単位が取れて卒業できる大学も多かった。つまり、それより前に大学を卒業した30代後半より上の世代にとっては、大学は遊ぶところという認識があり、今の大学生活とギャップが生まれているんです」

 大学生から不満の声が上がるなか、コロナの対応を評価できる大学も存在する。

「岡山県の就実大学では、4月16日のかなり早い段階で全学生への一律支援金を決定しました。図書の宅配送料を負担する近畿大学もとても行き届いた対応でした。金銭的なフォロー以外にも、学生主催のイベントに学長が参加した甲南大学のように、大学が学生に寄り添っている姿勢が大事です」

 大学と大学生を取り巻く環境がより良くなることを願うばかりだ。

コロナ対応力の高い大学

▼就実大学(岡山県)

4月16日、全学生への一律支援金を他大学よりいち早く決定。オンライン授業によるPCなどの情報機器や通信費等に必要と判断。金額は3万円。

▼近畿大学(大阪府)

総額27億円というトップクラスの支援規模のほか、図書の宅配送料の負担やウェブ閲覧図書の拡大などの図書館サービス、オンライン診療などが充実。

▼甲南大学(兵庫県)

オンライン新入生交流会に学長が参加。「学生主催のイベントに学長が参加する例は珍しく、新入生に寄り添う姿勢を見せた模範にしたい例」(石渡氏)。

【石渡嶺司氏】

大学ジャーナリスト。大学生の教育、就活などに造詣が深く、『大学の学科図鑑』(ソフトバンククリエイティブ)、『キレイゴトぬきの就活論』(新潮新書)など著書も多数

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