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2020年9月 7日 (月)

ポスト安倍にのしかかるコロナ失敗の「負の遺産」

ポスト安倍にのしかかるコロナ失敗の「負の遺産」

金子 勝



Photo:Pool/gettyimages© ダイヤモンド・オンライン 提供 Photo:Pool/gettyimages

失敗続きのコロナ対策

徹底検査が最大の経済対策

 8月28日、安倍晋三首相が辞任を表明した。

 首相の連続在位日数が最長だったが、デフレ脱却を掲げたアベノミクスをはじめ、「1億総活躍社会」「働き方改革」など、スローガン倒れで終わったものが多い。

 むしろ今後の日本経済、後継政権には、安倍政権がもたらした「負の遺産」が大きくのしかかってくることが予想される。

 まずは当面の新型コロナウイルスがもたらす経済危機をどう克服するかだ。安倍政権はこの問題でも失敗続きだからだ。

 バブル崩壊や福島第一原発事故などのリスクにきちんと対処できず、日本経済は衰退を重ねてきたが、ポスト安倍も同じ道を歩みかねない。

楽観的見通しが支配するが

倒産や休廃業が急増の恐れ

 実際、今年の4~6月期に実質GDP成長率は戦後最悪となるマイナス27.8%を記録した。

 8月3日に公表された東京商工リサーチの調査によれば、調査に回答した6638社のうち7.7%が休廃業する意向だと回答している。日本全国に換算すると27万社に当たる。

 さらに、1年以内では約12万社が休廃業すると推計されている。

 このままいくと、秋から、飲食、宿泊、観光、交通、アパレル、小売りなどの業種を中心に倒産、休廃業が相次ぐ危険性がある。

 ところが、政府も民間シンクタンクの多くも楽観論がいまだに支配している。

 これまでのところ、7~9月期から急速に景気が回復し、2020年度の実質GDP成長率はマイナス4~5%にとどまるとしている。

 確かに6月の家計消費は回復の兆しはある。2人以上の世帯について、対前年同月比で見ると、新型コロナの流行とともに実質家計消費は4月にマイナス11.1%、5月にマイナス16.2%と大きく落ち込んだが、6月はマイナス1.2%まで戻した。

 だがこれは、「1人10万円給付」などの効果で実収入が15.6%も増えた結果だ。

 しかし、直接給付の効果は一度きりであり、7月半ば以降、感染が再び拡大したため、家計消費は再び陰りを見せている。もし経済状況が急速に改善しなければ、アベノミクスで無理して赤字を膨張させてきた財政は破綻に向かっていくしかないだろう。

感染止まらず経済落ち込めば

“財政崩壊”が現実味

 7月31日に公表された内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」では、成長が実現したケースで見ると、2020年度の名目GDP成長率がマイナス4.1%しか落ち込まないまま、21年度には3.5%、22年度には4.3%に急上昇し、V字回復を遂げる想定になっている。

 だが、にもかかわらず、名目長期金利は23年度までゼロ金利のままとどまるという。

 だが大きなバブルでも実現しない限り、こんな経済成長は無理だし、一方でゼロ金利が4年間も続くのかどうか、かなり非現実的な想定だ。

 問題は、こうした甘い前提でも基礎的財政収支(プライマリーバランス)の均衡は、当初の25年度から27年度に遅れ、さらに2年遅れの29年度になることだ。

 逆に言えば、このまま経済成長が下方屈折していけば、あるいは逆に金利が大きく上昇していけば、財政再建はほぼ絶望的になる。

 さらに世界的な株高が破裂し、円高に振れれば、経常収支が赤字化する可能性が出てくる。そうなれば、ISバランス(財政赤字=民間貯蓄+経常黒字)が崩れて、国債を国内で消化できなくなり、財政崩壊が現実化することになりかねない。

経済と感染防止のジレンマ解消は

検査の徹底が最優先

 こう考えると、抜本的なコロナ対策こそが最大の経済対策であり、危機回避の鍵になる。

 新型コロナウイルスの感染におびえ、外出や営業などの感染防止のための自粛を余儀なくされることが繰り返される状況では、十分な経済活動は難しく、経済成長もままならないからだ。

 しかも、検査をせずに自粛だけをしていても、表向き、感染者数は減るかもしれないが、明確な患者やクラスターを発見できないまま、無症状の人などの隠れ感染や家庭内感染などの実態が見えないままで潜ってしまう。

 そして経済活動を再開すれば、再び感染が拡大する。こうしたジレンマに対応できないでいる限り、日本経済は落ち込んでいくしかない。

 残念ながら、事態は安倍政権のもとでその通りに進んできた。

 今年の5月25日、安倍首相は緊急事態宣言を終了させる際の記者会見でコロナ問題について、「日本ならではのやり方でわずか1カ月半で流行をほぼ収束させることができた。日本モデルの力を示した」と語った。

 しかし、安倍首相が言う「日本モデル」は、前述したジレンマを生み出しただけだった。

 7月半ば以降、感染の第2波というべき感染再拡大が起きたが、安倍首相は重症者が少なく、医療体制が逼迫していないことを理由に、緊急事態宣言の再発出をしないどころか、批判が強かった「Go To トラベル」を強行した。

 その結果、全国的に感染が全国に拡散し、重症者数も再び増え始めている。

 明らかに優先すべきは、検査を徹底して無症状者を含めて把握し、隔離や必要な治療することだった。

無症状者らによる感染リンク

経済再開で一気に顕在化

 実際に、国立感染症研究所が8月5日に公表した「新型コロナウイルスSARS-CoV-2のゲノム分子疫学調査2」によると、今年春の「ヨーロッパ系統のウイルスの感染拡大がいったん収束して」から3カ月の空白を経て、軽症者もしくは無症状者を介してつながった感染リンクが経済活動再開によって一気に顕在化したと推測されると結論づけている。

 これは、感染研病原体ゲノム解析研究センター長の黒田誠氏が、7月16日付で新型コロナのゲノム配列を分析し得られた結論だ。

 それによると、初期に武漢型、3月に欧州型が流行し、その後は、地域固有のクラスターが発生した。

 そして今回の感染再拡大は、東京由来のウイルスの検査が徹底されず放置された結果、全国的に拡散してしまったのである。

 少なくとも、7月16日段階で、「Go To トラベル」キャンペーンは再検討されるべきだったのだ。

 思い起こせば、コロナ対応での失敗はこれだけではない。

 2月9日の段階で、乗員の食事係の多数が感染していたにもかかわらず、「入国拒否」のままクルーズ船は“監禁感染実験船”になってしまった。

 データなしのままの「一斉休校」も効果が検証できなかった。

 先に書いたように、緊急事態宣言によるステイホームは隠れ感染と家庭内感染を増やして「第2波」を生み出した。「アベノマスク」もひどかった。その費用の500億円があれば、PCR検査は1000万人分ができたはずだった。

 さらには持続化給付金事業を電通などに委託した「ピンハネ疑惑」などもある。結局のところ、安倍政権はコロナ対策で何一つ成功していない。

 それでも政府は、失敗を決して認めず、いまだに徹底した検査を最優先で行うことをしようとしない。

 安倍首相が退陣の意向を表明した28日、秋以降の季節性インフルエンザとの同時流行に対応するとして、冬までに1日20万件の検査能力を確保するという追加対策を決めたが、これまでを考えれば、きちんと実行されるのかは疑わしい。

抜本策遅れると、経済衰退

不良債権問題や原発事故と同じ

 日本経済は、バブル崩壊や福島第一原発事故などのリスクにきちんと対処できず、そのことに足をとられて衰退してきたが、新型コロナウイルス問題でも同じことになる恐れがある。

 実際、新型コロナウイルスがもたらしている経済危機も、バブル崩壊で起きた不良債権問題における「カウンターパーティー・リスク(取引相手が突然、破綻して損失を被るリスク)」と非常に似ている。

 銀行は貸し出しを焦げ付かせた責任の所在を曖昧にし、不良債権査定をごまかしたために、どのくらい不良債権が隠れているかが分からなくなり、銀行同士が疑心暗鬼になって資金の貸し借りができなくなった。預金者も銀行が信用できなくなって、預金引き出しに走り、金融危機につながった。

 新型コロナも検査が決定的に不足していて感染の実態がわからないために、お互いが信用できないので、感染していない者同士でもソーシャル・ディスタンスを保たねばならない。

 対面販売や営業でさえ避けられるようになり、経済活動が萎縮してしまう。

 危機管理の失敗という意味で、問題の構図が極めて似ている。

 では、どうすべきだったのか。

 不良債権問題では、厳格な不良債権査定という徹底的な検査が最優先で行われるべきだった。

 そして、症状に応じて治療策をとるべきであった。

 具体的には、破綻債権、破綻懸念先債権、要注意債権、正常債権などリスク別に不良債権を切り分け、必要な貸倒引当金を積み、それで自己資本が不足すれば、不正会計をした経営者に責任をとらせ、公的資金を注入する。

 あるいは、欧州で行われたように、銀行を国有化して不良債権をバッドバンクに集めてゆっくり処理し、残りを再民営化する方法だ。

 日本では常に追い込まれて、金融危機になるまでずるずると不良債権処理が先延ばしされた結果、公的資金は表向きだけでも47兆円が費やされた。

 この間、ひたすら財政金融政策で景気を支え続けたことで、財政赤字が膨大に膨らみ、産業の衰退も進んでしまった。

 この点でもコロナ対策は酷似する。徹底した検査を行って原因を取り除かずに、お金をばらまいているだけだからだ。

危機管理の鉄則は

問題の規模や本質を把握すること

 大きなリスクに対して何をなすべきなのか。

 何より徹底した検査をし、問題の規模や本質をきちんと把握し、リスクを正確に見極め、果断に一気に対応策をとることが不可欠だ。

 まず、感染震源地(エピセンター)をつぶすために、徹底したPCR検査と精密抗体検査を実施し、陽性者は隔離して症状に応じて抗ウイルス剤や免疫制御剤のアクテムラなどで死亡を減らす。そしてCOCOAというスマホのブルートゥースを使ったコンタクトトレーシングアプリで追跡し、さらなる感染リスクを減らしていく。

 さらに病院、高齢者施設、あるいは感染しやすい対面販売をしている商店街、飲食店、学校や保育園などは、定期的にPCR検査を行うことで、エピセンターを作らせないことだ。

 こうした安心安全を確保するコロナ対策をとることが、経済活動をより自由にしていくために必須の前提となる。

 そしてこうしたことをきちんとやって初めて、中長期的に経済成長につながる、実効性のある産業戦略を作ることができる。

 コロナ危機が明らかにしたのは、大都市集中がリスクを高めるということだった。従って、「分散革命」とでもいうべき、産業と社会構造の変革が必要になっている。

 世界的には「グリーンリカバリー(緑の復興)」がその突破口になる。

 地域で太陽光や風力などの小規模な再生可能エネルギーをたくさん作り、それを蓄電池で蓄えつつ、AIを使ったIoT(情報通信技術)で、コントロールする。

 自然エネルギー発電施設は世界で爆発的に増え発電コストは激減している。建物の構造や電気自動車などの耐久消費財も大きく変わっていく。

 この分散型のエネルギーを突破口にして、医療や介護や教育などの福祉分野も財源と権限を分権化して雇用を作り出す。農業と食も6次産業化やエネルギー兼業で分散型に変えていく。こうして幅広い内需のすそ野を作っていくのである。

 だが、改めていうが、まずは徹底した検査がなければ、こうした産業戦略を実行する手前で政策の進行は止まってしまう。

(立教大学特任教授 金子 勝)


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