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2020年6月29日 (月)

安倍「一強」が終焉、混迷期に入る日本政治~『論座』星 浩

安倍「一強」が終焉、混迷期に入る日本政治。「ポスト安倍」は? 総選挙は?

隠されていた現実をあぶりだす新型コロナ危機。ざわつき始めた自民党

星浩 政治ジャーナリスト

2020年06月28日

安倍一強安倍首相新型コロナ解散・総選挙

 

 新型コロナウイルスの感染拡大による危機は、隠されていた現実をあぶりだす。安倍晋三首相による「一強」政治は、危機への対応策が整っておらず、政策的な成果も乏しいことを露呈した。長期政権に伴う腐敗も表面化してきた。権力に安住してきた自民党は、新総裁選びと衆院の解散・総選挙をにらんで、ざわつき始めた。

 日本政治は「一強」支配から混迷期に入る。

官僚の忖度と官邸主導人事がいびつな形で合体

 2012年に発足した第2次安倍政権は、大規模な金融緩和を軸とした経済政策「アベノミクス」を展開。円安、株高を実現して、高い支持率を維持した。外交では日米同盟の再構築を進め、「安定感」をアピールした。

 政権運営としては、中央省庁の幹部人事を首相官邸直轄の内閣人事局が取り仕切り、霞が関ににらみを利かせた。多くの官僚人事はそれまで、各省庁の事務次官を中心に決められてきたが、安倍政権になってから、人事権は実質的に菅義偉官房長官と安倍首相に握られた。官僚たちは官邸の顔色をうかがうようになった。

 官僚たちの間では、官邸の意向を先回りして考慮する「忖度」の空気が醸成されてくる。それが典型的に表れたのが、森友学園への国有地払い下げをめぐる疑惑である。

 安倍首相の夫人昭恵氏が森友学園の理事長夫妻と懇意にしていたため、払い下げ交渉の記録には昭恵氏の名がしばしば登場した。しかし、当時の佐川宣寿・財務省理財局長は国会で「交渉記録はない」と明言。この答弁に合わせて、近畿財務局に保管されていた交渉記録の公文書は改ざんされた。改ざんに抵抗した財務局の職員は自殺に追い込まれ、佐川氏は国税庁長官に抜擢された。

 官僚が官邸の意向に沿うような対応を進める。国会では安倍首相を守る答弁を繰り返す。忖度と官邸主導人事がいびつな形で合体し、公文書管理など民主主義の根幹が傷つけられた。

 首相主催の「桜を見る会」をめぐっても、安倍首相の後援会メンバーが、特別の枠で約800人も招待されていたことが判明したが、担当の内閣府は参加者名簿をシュレッダーで処分したという。メンバーたちは東京観光のツアー旅行の一環として参加していた。首相の周辺から、この公私混同に苦言を呈する動きはなく、長期政権の「おごり」が浮かび上がる。

限界が見え始めたアベノミクス。外交も進展せず

 安倍首相は政権復帰後、2013年、16年、19年の参院選と、14年、17年の衆院選で勝利し、政権を維持してきた。消費増税の延期や増税分の使途変更などを争点に掲げ、森友疑惑などを追及する野党の攻勢をかわした。自民党総裁選は、15年は無投票、18年は石破茂元幹事長との一騎打ちだったが、勝利して、長期政権を維持した。

 しかし、19年の参院選では、自民・公明の与党で過半数という勝敗ラインはクリアしたものの、参院での“改憲勢力”が三分の二を下回り、安倍首相の掲げる憲法改正は当面、困難になった。18年総裁選を経て、総裁の任期が残り3年となったこともあわせ、政権の勢いは弱っていた。

 政策面では、アベノミクスの限界が見え始めた。株高でも景気回復の実感は広がらない。成長戦略は何度も打ち出されたが、生産性は向上しない。社会保障の抜本改革も進まなかった。

 外交でも、安倍首相が「最優先」としてきた北朝鮮による拉致問題は進展せず、ロシアとの北方領土問題では、安倍首相が事実上、2島先行返還に舵を切ったのに、ロシア側は歩み寄る姿勢を見せなかった。頼みのトランプ米大統領も、再選に黄信号が点灯してきた。

共同声明署名式で握手を交わす安倍晋三首相(左)とトランプ米大統領=2019年9月25日、ニューヨーク

行き詰まった政権を直撃したコロナ危機

 行き詰まりを見せていた安倍政権をコロナ危機が直撃した。中国・武漢から広がった感染に対して、日本の水際対策は出遅れた。4月に予定されていた習近平・中国国家主席の訪日への影響を考慮し、「中国からの入国制限措置に踏み切るタイミングが遅れた面は否定できない」と日本政府関係者も認める。

 感染が拡大する中で、PCR検査が進まない点も医療関係者から批判された。医師や看護師ら医療関係者の奮闘もあって、欧米や南米のような感染拡大や死者の増加は食い止められたが、医療体制の不備も目立った。

 政府は経済対策として補正予算案の編成を進めた。当初は、安倍首相と岸田文雄・自民党政調会長が主導し、収入が激変する家庭などに最大30万円を給付することを決めた。だが、二階俊博・自民党幹事長や公明党が反発。急きょ、方針を変更し、国民全員に一人あたり10万円を給付することになった。

 いったん閣議決定した補正予算案が撤回され、新たに決定しなおすという前代未聞の事態となった。二階幹事長と公明党が反旗を翻せば、主要な政策も覆せることが明確になった。安倍首相の威信は大きく揺らいだ。

 10万円の給付金は市区町村が窓口となって支払われることになったが、マイナンバーで申請しても住民基本台帳との照合に手間取ったり、銀行口座と結びついていなかったりして、支給には時間がかかった。支援金などが短期間で支給された欧米や韓国などとのデジタル力の差があらわになった。安倍首相が突然打ち出した一世帯あたり2枚の布マスク(通称「アベノマスク」)の全国配布も、検品などに手間取り、国民の手元に届くのが遅れた。

“ごり押し”が通用しなかった黒川検事長問題

 コロナ危機と同時進行していたのが、検察庁の人事である。安倍政権は東京高検の黒川弘務検事長を検事総長に就けるために、検察庁法に規定がない検事の定年延長を強行した。「霞が関の幹部人事は官邸が決める」姿勢を貫くためだった。

 野党は強く反発したが、安倍政権はさらに、定年延長を正当化するために検察庁法に定年延長規定を盛り込む改正案を国会に提出したが、検察官OBや芸能人・文化人から「政権の恣意的判断で検察官を選別するものだ」という批判が広がった。政権は法案の成立を断念。黒川氏は新聞記者らとの賭けマージャンが発覚して、辞職を余儀なくされた。

 安倍首相や菅官房長官が“ごり押し”しようとしても、法案の内容に問題があり、世論が強く反発すれば、つぶれる。政権が「一強」を誇った時にはあり得なかったことである。

 そこに、河井克行前法相夫妻による参院選での買収事件が続く。河井前法相は安倍首相の側近であり、案里夫人が立候補した参院選では、一般の自民党候補の10倍に上る1億5000万円の資金が自民党本部からつぎ込まれた。自民党内からも「官邸のえこひいき」「不公平だ」という不満が噴出した。

参院選で当選を確実にし、集まった支援者らにあいさつをする河井案里容疑者=2019年7月22日午前0時2分、広島市中区

焦点は自民党総裁選びと総選挙のタイミング

 コロナ危機への対応が滞る中で相次ぐスキャンダルのあおりで、メディア各社の世論調査では安倍内閣の支持率は軒並み30%程度に落ち込み、不支持率は50%前後に上っている。「一強」を誇った長期政権の幕切れが近づき、日本政治の焦点は、「ポスト安倍」の自民党総裁選びと衆院の解散・総選挙のタイミングへ移ってきた。

 この「政局」の特徴は、期間が限られていることだ。安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月末まで。それまでには後継総裁・首相を選ばなくてはならない。一方、衆院議員の任期は21年10月21日まで。それまでには解散・総選挙が行われることになる。つまり、長くても1年4カ月以内には、現政権に代わる新政権が発足して政治の局面が変わるのである。

 では、それまでにどういう展開が予想されるのか。

予想される三つの展開

 まず、年内か年明けに安倍首相が退陣表明し、自民党の総裁選となるケースだ。21年9月の任期満了前の辞任なら、「急を要する事態」として、自民党の衆参両院議員と都道府県連代表による投票となる。安倍首相は後継に岸田政調会長を推す考えで、麻生太郎副総理・財務相らが岸田氏を支援すれば、数の上では優勢だ。石破茂元幹事長も立候補するが、国会議員の数では劣勢。二階幹事長や菅官房長官らの対応が注目される。

 新首相が組閣して国会に臨むが、野党側が「国民の信を問え」と迫るのは確実。間を置かずに解散・総選挙という流れになるだろう。

 次に、安倍首相が21年9月の総裁任期ぎりぎりまで政権を維持し、任期満了で総裁選となるケース。100万人ほどの自民党員が参加する総裁選では、人気の高い石破氏が有利だ。石破首相が誕生して組閣し、ほぼ衆院の任期満了での総選挙になだれ込む公算が大きい。

 21年夏までに安倍首相自身が解散に踏み切るケースも残されている。圧勝して「総裁4選」に突き進むのか、勝利しても自民党総裁任期の満了で退陣して後継者に政権をゆだねるのか、総選挙で敗退して責任を取って退陣に追い込まれるのか。いくつかのパターンが考えられる。いずれのケースでも、自民党内は各派閥や総裁候補の思惑が入り乱れて混乱する。「一強」時代には見られなかった事態であり、自民党の若手議員にとっては、初めて経験する本格的な権力闘争である。

「安倍氏に総裁4選をめざす考えはない」

 安倍首相の側近は最近、こんな見通しを語った。

 「安倍氏には総裁4選をめざす考えもないし、4選を実現するための解散・総選挙を自らの手で行う意思もない。岸田氏を後継に想定していることは確かだが、その具体的な道筋を描いているわけでもない」

 この見通しが正しければ、安倍首相の退陣表明を受けて自民党総裁選、その後に衆院解散・総選挙というシナリオが現実味を帯びてくる。

 11月3日には米国大統領選の投票が予定されている。トランプ大統領は、コロナ危機への対応の稚拙さに加え、警察官による黒人暴行事件にまともに向き合っていないことから、世論の支持は低下。世論調査では民主党候補のバイデン前副大統領に水をあけられている。選挙でトランプ氏が敗北したら、どうなるか。

 トランプ氏は、選挙が公正でなかったなどとして敗北を認めない可能性が高い。それでも、欧州諸国の首脳たちは「バイデン大統領の誕生」に祝意を表するだろう。安倍首相はどうするか。「盟友」のトランプ氏の主張に引きずられるようだと、今後の日米関係に影を落とすことになる。安倍首相の側近たちも、こうした事態を懸念し始めている。

重い課題を背負って

 いずれにせよ、内外情勢が混沌とするなかで安倍「一強」時代は終焉し、後継選びの混迷を経て、日本政治は新しい局面に入る。

 日本経済は、アベノミクスによる表向きの好景気に浮かれて、国民生活の基盤整備が遅れた。デジタルシフト、教育水準の底上げ、社会保障の抜本改革、中長期の財政再建など難問が手つかずに残されている。ポスト「一強」の日本政治が、重い課題を背負ってスタートするのは間違いない。

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