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2020年5月26日 (火)

年金75歳支給の布石 厚労省がひた隠す年金改正法案の狙い

 

 

コロナ対策では存在感がなかった厚労省だが…(左から加藤勝信・厚労相、政府諮問委員会の尾身茂会長、西村康稔・コロナ担当相)© マネーポストWEB 提供 コロナ対策では存在感がなかった厚労省だが…(左から加藤勝信・厚労相、政府諮問委員会の尾身茂会長、西村康稔・コロナ担当相) 

 新型コロナウイルスの感染拡大が日本経済に大きなダメージを与える中、厚生労働省は今年3月に年金制度改正法案を国会に提出し、まともな議論がないまま5月12日には共産党を除く与野党の賛成で衆院を通過、今国会での成立が確実となった。

 年金改正法案は具体的には、【1】パートなど短時間労働者の厚生年金の適用拡大、【2】在職老齢年金の支給停止基準の緩和、【3】年金繰り下げの年齢上限を75歳に引き上げ――の3つの柱が盛り込まれている。その狙いについて、年金博士こと社会保険労務士の北村庄吾氏はこう解説する。

「これまで年金には『老後の生活保障』の役割があったが、これからの時代は年金だけでは国民の老後の生活を支えきれないから、65歳以降は年金をもらいながら働き、生活費の不足分を稼ぐという社会に転換していかなければならない。

 そのため、在職老齢年金の年金カットを縮小して多くの人が年金をもらいながら働きやすくなる仕組みに変える。また、仕事の収入だけで生活できる人には75歳まで年金を繰り下げて長く働いてもらうかわりに、年金額を増やすという、国民にとっては定年後の人生設計の大幅な見直しを迫られる内容なのです」(北村氏)

 だが、年金をもらいながら働きたいと思っても、コロナで求人は急激に減り、企業倒産が相次いでいる。コロナ後の社会は労働環境が大きく変わり、政府が意図するような高齢者が「年金では足りない生活費を働いて稼げる社会」がやってくるかは疑問だ。年金制度改正のコンセプトそのものが見直しを迫られている。

 それでも厚労省が急いで法案を成立させようとしているのはなぜか。北村氏はこの制度改正には、国会で議論されていない重大なテーマが隠されていると指摘する。

 まずは「老後資金不足」の正確な金額だ。金融庁の報告書にあった年金だけでは2000万円足りないという試算について、政府は「誤解を招く書き方だった」と文書の受け取りを拒否したが、その金額が正しいのかの検証も説明も一切なされていない。北村氏が語る。

「年金だけでは足りないから定年後も働けというのであれば、政府は老後資金の不足額を隠さずに国民に伝え、コロナ後の社会でどのくらいの収入を得ることができるのか、年金と給与のモデルケースを国会に示すべきでしょう」

 厚労省にとっては突かれたくない問題であり、コロナで隠しておきたいのだ。次は「マクロ経済スライド」という年金を毎年減らしていく仕組みの見直しだ。

「働きながら年金をもらう社会にするのであれば、年金を毎年目減りさせていく政策を廃止しないと、国民は長期的な資金プランを立てることが難しくなります。この議論もなされていない」(同前)

 そして「75歳繰り下げ」制度の導入の陰で厚労省がひた隠しにしているのが、年金支給開始年齢の70歳引き上げだ。

「政府はこれまでの年金改正で先にサラリーマンの定年を引き上げ、その後、年金支給開始年齢を引き上げるという方法をとってきた。今国会では来年4月から70歳までの雇用延長を企業の努力義務とする高年齢者雇用安定法改正案を成立させている。次に来るのは年金の70歳支給であることは明らかです。

 さらに今回、年金を繰り下げできる年齢が75歳まで引き上げられるのは、いずれは完全な年金75歳支給にするための布石とみていいでしょう」(同前)

 まだある。安倍政権と厚労省が一番隠しておきたいのが、年金の運用失敗だろう。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)はリスク運用で株への投資をそれまでの2倍に増やし、運用資金のざっと半分を国内と海外の株に注ぎ込んだが、そこに世界的大暴落が起きて18兆円もの巨額の損失を被った。昨年の株価上昇による利益をすべて吐き出したうえ、昨年度(今年3月期)の運用実績は8兆円を超える赤字になったと試算されている。政府の運用方針変更が完全に裏目に出たわけだが、その後も、暴落した株の買い支えに年金資金が投じられているとされる。

 自粛に耐えてきた国民に知られれば怒りが爆発しかねない問題だ。こうした問題は本来、年金制度改正案とセットで議論し、国会で追及されるべき内容だが、与野党とも国民に隠したまま法案を衆院通過させた。

【プロフィール】北村庄吾(きたむら・しょうご)/1961年生まれ、熊本県出身。中央大学卒業。社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャルプランナー。ブレイン社会保険労務士法人 代表社員。コロナ倒産を防ぎ、社員の雇用を守るための『「雇用調整助成金」完全申請マニュアル』が発売中(http://koyoujoseikin.jp/)。

※週刊ポスト2020年6月5日号

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