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2018年4月11日 (水)

詳報 3・31森友豊中集会~レイバーネット日本

森友問題がゆがめた政治と教育~前川喜平・寺脇研・木村真の三氏がパネル

    

林田英明


 *(左から)前川さん、寺脇さん、木村さん

 「刑事訴追の恐れがある」として55回も証言を拒否した佐川宣寿・前国税庁長官の衆参両院予算委員会での証人喚問。学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐる決裁文書の改ざん問題が安倍政権を直撃している。その証人喚問から3日後の3月31日、大阪府豊中市立芸術センターで「森友問題から見えてきたもの~ゆがめられた政治と教育」と題した集会がホットなタイミングで開かれた。パネルディスカッションに登場したのは▽前文部科学事務次官の前川喜平さん(63)▽元文科官僚で京都造形芸術大学教授の寺脇研さん(65)▽森友問題の火付け役となった豊中市議の木村真さん(53)――の3人。大ホールを埋め尽くす1500人の参加者が3人の言葉に聴き入った。森友学園問題を考える会主催。

●偽証してまで守ろうとするもの

 司会は「新聞うずみ火」の矢野宏さん(58)。軽妙な話術で3人から話を引き出していく。まずは前川さん。佐川氏と面識はないと断ったうえで「生まれた時代が良くなかった。江戸時代なら立派だったが、ご主人と思う人をかばっているのが見てとれる」と切り出し、民主主義の今の時代の本当のご主人である国民のためにこそ尽力すべきだとした。改ざん問題については「公務員が一局限りの判断でやるはずがない。何らかの政治的な力が働かないとありえない」と言葉に力を込めた。そもそも過大な期待を証人喚問に抱いてはいなかったそうだが、森裕子参院議員(希望の会=自由党)とのやりとりに着目したという。それは3回繰り返される以下の質問である。

 【森氏】今井尚哉首相秘書官と森友問題で話をしたことはないか。
 【佐川氏】首相官邸の秘書官が財務省の課長クラスと調整していたと思う。調整とは、こういう答弁ができたのでお届けするということだ。
 【森氏】今井氏と森友問題で話をしたことはないか。
 【佐川氏】私の国会答弁に関して今井氏と話をしたことはない。
 【森氏】そんなこと聞いてない。今井氏と話をしたことはないんですね。
 【佐川氏】森友問題について今井氏と話をしたことはない。
 前川さんは、佐川氏が2回はぐらかして3回目に答えた不自然な姿に「ああ、これは偽証だ」と感じたという。そうまでして何かを守ろうとしている印象を抱かせるに十分だった。

 加計学園問題も思い出そう。国家戦略特別区域に指定された愛媛県今治市における加計学園グループの岡山理科大学獣医学部新設計画をめぐって不自然な決定がなされた問題だ。森友問題と加計問題は、国政の私物化という点で似た構造を持つと考えるのは前川さんだけではない。主体が国か地方かの違いだけ。学校設置認可における公共財産の特例的な扱いは安倍政権だからこそなされたのではないかとの疑念は当然であろう。

●自民党議員の「照会」という圧力

 政治と行政の関わりについて、前川さんは自分の「被害」を元に語り始めた。名古屋市の公立中学校に招かれた前川さんの授業に対して、文科省が自民党の池田佳隆衆院議員と赤池誠章参院議員の照会を受け同市教委に内容を執拗に問い合わせた件である。河村たかし市長が「教育基本法が禁じる『不当な支配』になる恐れが強い」と危惧するほどの大問題に発展している。

 では、どんな授業だったのだろう。右派団体の日本会議に所属する両議員にとっては重大関心事らしい。だが、前川さんが中学生に話した内容は、自身が中学のころ不登校だった過去を打ち明け、自分で自分の性格を変えるのは努力で可能だという体験を中心に、夜間中学の役割や宮沢賢治の詩を紹介して、どう人生に生かしてきたかなどである。「カケもモリも言ってませんから」と会場を笑わせた。

 文科省が自らの判断で質問状を送るはずはない。教育に携わる文科省の役人は、個別の授業に口を出してはいけないことは十分に分かっている。教育行政の鉄則をわきまえているから、何らかの政治的な力が働いていると前川さんは校長から一報を聞いたとき思った。だから、その後に判明した「問い合わせ」は強力な圧力だったに違いないとにらんでいる。それでも議員の圧力を否定する文科省に対し、前川さんは「そこまでかばうのか」とあきれる。確かに法律案や予算案、白書など文科省が進める案件に立ちはだかる議員の声は無視できない。そんな後輩たちに同情しつつ、「面従腹背のテクニックを私がもっと教えておくべきだった」とジョークを交えて自省した。この場合「大臣の了解を得なければ」と言って断る方法が “正解”だったとする。

 4月14日に山口県下関市と北九州市で前川さんと寺脇さんの教育講演会が開かれる。関門海峡を挟んで隣り合う両市。それぞれの主催団体から講演を依頼された市教委は、「問題ない」とする北九州市に対し、下関市は「ふさわしくない」と断った。安倍晋三首相のお膝元でのこの対応は忖度だったのか圧力だったのか……。

●立法府だけでなく行政府も暴走

 寺脇さんは「前川さんの人気はすごいね。私とはケタが一つ違う」と参加者の熱気にまず感嘆した。実は寺脇さんも同じ頃、前川さんと同様、名古屋の中学校で授業した。「でも全然調べられない。というか、やったことも多分わかってない」と会場を沸かせる。つまり、公共を装った恣意的な調査が権力をもってなされている。日本全国の小中高校は合わせて約3万5000校。各地でさまざまな人が授業に入っている。しかし、その中で前川さんだけが調べられている異常。なるほど法的には認められるかもしれない。しかし、文科省の大枠の中で学校や教育委員会を信頼する姿勢が失われれば教育は死ぬ。それを寺脇さんは懸念した。

 それから前川さんのほうを向いて「天下り、あれは良くないね。反省しないと」と茶化すように言うと4年後輩の前川さんは軽く頭を下げながら、しかし表情は穏やかだった。昨年発覚した文科省の組織的な再就職あっせん問題で国家公務員法上の処分を受けた人間は43人いる。その大半が局長や審議官など要職を務める現職なのに、なぜか辞任した前川さんだけが今も槍玉に挙げられる。他の処分者は同じように監視されていない。

 森友問題に話を戻せば松井一郎・大阪府知事はどうなのか。「相当ひどいところまでいってたんですよね」と寺脇さんが口を開くと会場から賛同の拍手が起こった。森友学園の籠池泰典前理事長が昨年3月の証人喚問で「知事にはしごを外された」と述べたように、小学校設立に関する大阪府への申請では知事サイドの後押しをうかがわせる証言をしている。森友学園と日本維新の会のつながりは深そうだ。2015年1月に大阪府私立学校審議会が小学校設立を「認可相当」と答申決定したのは維新政治の力だと司会の矢野さんも説く。だが、権力の座にある者は情報をコントロールして表舞台から遠ざかる。

 「選挙で選ばれた人の言うことが何でも通ったら三権分立は崩れる」と寺脇さんは語気を強め、能力・適性とは関係なく選ばれた国会議員らの暴走を戒めた。今回、財務省が改ざんした文書を国会に提出した事実を考え合わせれば、立法府だけでなく行政府も暴走し始めていると寺脇さんは危惧する。

●歴史修正主義者たちの意思見抜け

 木村さんは、森友学園の教育を最初に問題視した市議である。本質をいきなり突いていく。「これは、政権中枢と維新・松井知事が車の両輪となって愛国的な教育をする学園に肩入れした事件だ」。学校教材に教育勅語を活用するのを否定しないとする答弁書が昨年4月に閣議決定されたことも挙げながら「教育勅語は天皇が臣民に下す文書だから、内容以前に存在自体が主権在民の憲法に反している」と憤る。こうした流れを踏まえて、8億円値引きという国有地 “たたき売り”の国家権力による私物化の視点にとどまらず、幅を利かす歴史修正主義者たちの意思を見抜く必要性を説いた。

 そのうえで、森友学園と国による国有地売買交渉のやりとりが音声データとして公表された意味を問う。近畿財務局の池田靖・国有財産統括官(当時)と思われる人物が「(籠池)理事長がおっしゃる0円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を今やってます」という返答は木村さんに言わせれば「普通に考えれば背任になる。公文書改ざんは刑法犯罪。忖度、忖度と言うが、忖度で犯罪はせんでしょ。石橋をたたいても渡らない公務員が犯罪を犯すということは、目の前の橋が危ないと分かっても渡らざるをえない強い圧力があったと考えるのが自然」と主張した。逆に、圧力もなしにまかり通っての国有地売買や文書改ざんなら問題は極めて深刻ではないかと案じた。

●敗戦の清算せず教育勅語復活へ

 森友問題で官邸から圧力をかけてきた人物は誰なのか。前川さんは実名を挙げる。佐川氏の証人喚問で名前が挙がった今井尚哉氏。「根拠も証拠もなく、私の主観的な印象」と念を押してはいても、今井氏の立ち回りを考えるとうなずいてしまう。一方、加計問題では首相補佐官の和泉洋人氏。実際、前川さんに対して2015年9月に「戦略特区で構えるから早く進めなさい。総理が自分の口では言えないから私が言う」と明言したからだ。また、藤原豊・内閣府審議官(当時)が担当課長に「総理のご意向だと聞いている」と述べたことや萩生田光一・内閣官房副長官(当時)が高等教育局長に「総理は『平成30年開学』とおしりを切っていた」と発言した記録が内部文書としてある。この3ルートを示して「官邸からの圧力は間違いない」と断定する。だから文科省は忖度したのだろうか。前川さんは否定して「最後は押し切られた」と見ている。今月10日には、柳瀬唯夫首相秘書官(当時)が2015年4月に愛媛県職員と面会し「首相案件」と説明していたとする備忘録のコピーが表に出てきた。疑惑は深まるばかりである。

 「ひっくり返った国家観」と一蹴する教育勅語を前川さんはそらんじてみせた。「批判するには勉強しなければいけない」と言う。明治時代の中ごろに作られた神話に戻ろうとするのは「ナンセンス極まりない」と断じるが、まさにその教育勅語を称揚する下村博文氏の文科相時代に苦渋の答弁をせざるをえなかった初等教育局長時代を振り返った。2014年4月の参院文教科学委員会でのこと。「教育勅語の中には今日でも通用するような内容が含まれており、これらの点に着目して学校で活用することは差し支えない」と答弁するよう求められたものの葛藤の末、最後の「差し支えない」を「考えられる」と変えた。結局、これでは不十分だと感じた下村氏が「差し支えない」と自ら答弁することになったから、はかなき抵抗だったかもしれない。しかし、前川さんの身のかわし方は人間としての良心の発露といえよう。決して無意味ではないし、今の活動につながっているのだろうと思った。

 教育勅語の復活は、敗戦時に確かな清算をしなかったために戦前の思想や勢力が残存したからだと前川さんは悔やむ。「ちゃんと駆除しなかったものが増殖してきた」と害虫に形容するのだった。

●トップダウンの政治で影薄い大臣

 「いま側用人が官邸にいっぱいいるんじゃないか」と言うのが寺脇さんである。もし自分が首相秘書官だと仮定すれば、と前置きして話す。森友学園が設立する私立小学校の認可や国有地払い下げに安倍首相が「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と失言したのを聞き、慌てて財務省に電話する。「まさか、そういうことがどこかに出てきたりはしないだろうね」。その問いかけは「圧力」となり「指示」に変じて文書改ざんまで突き進んでしまう構図が寺脇さんには浮かんでくる。

 さかのぼれば2008年、橋下徹氏を知事に当選させた大阪府民の問題になってくると寺脇さんは言う。「クソ教育委員会」と罵倒して教育の独立をないがしろにする彼の姿勢を寺脇さんは嫌悪する。福岡と広島の県教委に赴任した頃は、知事の勝手な思いには従わないとの自負があったと自らの体験を披歴し、議会の議決には従っても一議員の物言いには頓着しない教育の独立が、いま揺らいでいないかと心配した。そして大臣の影の薄さを嘆く。以前は役人が大臣を祭り上げ、今はトップダウンで政治が進められるから「どこの省も大臣なんて必要ないですよ」と逆説的に断定する。しかし、まともな答弁もできないような議員が年功序列で大臣になるのを許しているのは国民だとクギを刺した。

 寺脇さんは暗記重視を嫌う。「私は、ゆとり教育の人ですから」と笑いを取り、九九など最低限の暗記は別にして、物事はその場で考えればよいとする。ところが全国の教育機関では論語などの暗唱に躍起だ。意味が分からないものを暗唱させると脳が活性化すると効用を説かれても寺脇さんは首をかしげ「訳の分からないことを暗唱するんだったら、分からないものを自分で調べて分かるほうが百倍大事だと思う」と持論を唱えた。だから、森友学園が経営する塚本幼稚園での教育勅語の暗唱を親が批判もなく子どもに許しているようではいけなかったと諭した。

●民主主義が根こそぎ腐る瀬戸際

 安倍政権になって官邸の力が増したといわれる。前川さんは言葉を選びながら内実をさらす。「秘書官、補佐官、参与らが、本来各省が持っているはずの行政を官邸の指令で動かしている状況になっている」。これは2006~07年の第1次安倍政権時より格段に強まったという。その前の小泉政権でも官邸権力は肥大化したが、第2次安倍政権以降は各省が持っている機能を奪い去ってしまったのだ。「そこが非常に心配だ」と前川さんの声は沈む。

 2014年に設置された内閣人事局によって、審議官以上の人事が官僚主導から官邸主導に変わったことも大きい。内閣の持つ人事権は司法も含めて絶大な力を発揮する。「今の政権はそれを知っていてフル活用している」と前川さんは語った。そして今春からの小学校の道徳教科化を懸念する。個人の尊厳でなく、自己犠牲の美徳を称賛するからだ。集団に帰属することを求められ、家族、郷土、学校、国家を絶対視する偏った倫理観が刷り込まれていく。「ここに皇室を尊敬しましょうと入れたら教育勅語の道徳観になってしまう」と恐れを抱く。中学校は来春から導入される。教材をどう批判的に使っていくかが運命の分かれ道になるのだろうか。

 最後に寺脇さんがリークの意味を語る。今回の文科省と昨年の陸上自衛隊南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽発覚と合わせれば、「教育と防衛」という重要性が役人や職員の良心を呼び覚ましてリークさせたという認識を示すと同時に、恐らく問題は2省にとどまらないと警告する。

 森友問題について誰一人責任を取っていない。木村さんならずとも「この国の民主主義は根こそぎ腐ってしまう」危機の瀬戸際にあるだろう。安倍政治と民主主義は対立する概念である。それでも長期政権であり続けるのは内閣支持率の相対的な高さであろう。だから寺脇さんは「この会場にいる人だけなら支持率は0%だろうけど、ここにいない人たちにどう伝えるかだ」と訴えた。開場前の長蛇の列に私は驚いたが、近くの女性が周囲を見回しながら「団塊の世代ばかりやね」と漏らしたように、これからを担う若者たちに届く言葉を考えたい。そうでなければ、この国の民主主義は死滅する。

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