3・11福島原発事故から6年目に際して ①
<福島第1原発事故>困窮する「自主避難者」 神奈川
毎日新聞 3/10(金) 6:30配信
東京電力福島第1原発事故で国の避難指示が出ていない地域から避難した「自主避難者」への住宅無償提供が、今月末で打ち切られる。ほぼ唯一の公的支援がなくなるのを前に、「放射能から子どもを守りたい」と神奈川県内に母子避難した自主避難者の中には、生活に困窮するケースも出始めている。
福島県いわき市から自主避難している母親(44)は2月下旬、自治体の窓口で生活保護の申請を相談した。脊柱(せきちゅう)管狭さく症でつえが無いと歩けず、うつ病も発症。収入は児童扶養手当と失業手当のみで、その失業手当も7月までに切れてしまう。
シングルマザーで、高校2年の息子(17)と小学6年の娘(12)を養う。2011年末、神奈川に避難したのは「親として子どもを守る義務がある」という一心からだった。
震災前、いわきでの暮らしは気に入っていた。近所でアルバイトをして暮らし、近くの実家の母は子どもの夕食づくりを手伝ってくれた。週末には子どもたちと海へ行き、ふ頭で投げ釣りをしたり磯遊びをしたり。親子とも友人が多かった。
「このまま、ここで暮らしていきたい」。そう思っていた矢先の震災だった。避難を提案すると、子どもたちは「友達と離れたくない」。親も「いわきは安全」と反対した。それでも、放射能への不安を払拭(ふっしょく)できない。「守れるのは自分しかいない」と避難を決めた。
避難先では、福島県と神奈川県が自主避難者のために無償提供する「みなし仮設住宅」のアパートに入居。パソコンでデータや印刷物を作製するDTPの知識を生かした仕事をしながら、子どもたちが学校になじめるようにと学校の役員活動も積極的に取り組んだ。
「賠償金もらっているから楽だよね」。子どもを通して知り合った親から言われ「うちはもらっていないけれど、家は自治体が用意してくれているの。家計はギリギリだよ」と伝えた。「子どもを守る義務を果たしているだけ。悪いことはしていない」と思いながらも、自主避難への偏見は心に重くのしかかった。
住宅の無償提供が「いつまでも続かない」という危機感と「自立しないと」という焦りもあって心労が募っていった昨春、「住宅無償提供は17年3月末で打ち切り」というニュースを知った。将来への不安はストレスになり、次第に眠ることができなくなった。うつ状態で仕事に集中できなくなり、重い腰痛も発症。7月に脳動脈瘤(りゅう)も見つかり、肉体的にも精神的にも仕事はできないと手術を機に辞職した。
心身が追い詰められる中、子どもたちにこれ以上、転居による負担をかけたくなかった。だが、学区内の県営住宅は3度落選。焦りが募る中、学区外だが約30分歩けば同じ学校に通える距離の市営住宅への入居が決まった。昨秋、引っ越し費用を抑えようと荷物を自ら運搬し、腰痛を悪化させてしまった。
娘と駅でホームに立っていたら、娘が腕をギュッとつかんできたこともあった。ホームから飛び込みそうに見えるぐらい、「落ちた顔」をしているのかと気付かされた。
全国で無償提供打ち切りに反対する署名活動などが広がっているが、賛同したい気持ちと賛同したくない気持ちがある。「いつまでも甘える気持ちはない」との思いからだ。だが、家賃の負担は大きい。「母子避難で親がからだを壊している人は少なくないと思う。自主避難者にも、もう少し自立に向かう補助をしてくれたら」
来年高校3年になる息子は国公立の大学入学を目指し、受験勉強をしながらアルバイトも始めた。「自分ももう一度がんばりたい」という思いもある。でも、身体的、経済的な不安が頭をもたげ、すぐに落ち込んでしまう。気持ちは行ったり来たりしながら、生活保護はまだ申請せずにいる。【宇多川はるか】
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