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2016年11月23日 (水)

南スーダンPKO派兵での駆けつけ警護は、戦争への参加~元自衛官 泥 憲和さんに聞く(上)  『未来』211号より

軍事力の限界―憲法9条の可能性
「駆け付け警護は他国部隊のため」
元自衛官 泥 憲和さんに聞く(上)

安保関連法施行後、「駆け付け警護」の新任務を付与された自衛隊の交代部隊が青森第9師団から南スーダンPKOに派遣される。「法律はでたらめ、現地情勢は戦闘状態。駆け付け警護は他国部隊防護であり、市民を救出できない。他国の人を殺すな、自衛隊員を死なせるな。日本は、武力に代わる平和ミッションで貢献できる」という、元自衛官・泥憲和さんに聞いた。(11月8日 文責、見出しは本紙編集委員会)

他国へ出かけ、他国部隊を守る

安保法制になってから自衛隊の任務は大きく変わった。これまでの「自分の国、国民を守る」とはまったく違ってくる。「他国へ出かけ他国の軍隊を守る」という新しい任務が命じられる。
いま自衛隊では「死生観の確立」という精神教育がおこなわれている。ある駐屯地では「自分の身体よりも銃、武器を守れ。お前が負傷、死んでも他の隊員がその武器を使う。重傷者は見捨てろ。それが実戦だ」という訓練である。それこそ実戦を知らない訓練だ。負傷したら見捨てられる軍隊で命をかけて戦えるだろうか。絶対に、士気は下がりますよ。いま、法律、政治的目的、自衛隊員を守る体制のデタラメさの上に、自衛隊自身がこのような教育、訓練をしている。米軍を誉めるわけではないし、いいか悪いかは別にして、米軍は兵力を維持するため1人でも多く助ける。それが軍隊というもの。
国連PKOは、いま世界15カ国で展開されている。そのうち9カ所が武力行使を前提にし、6カ所は武力行使を前提にしていない。ところが日本政府は、わざわざ武力行使が前提になっている内戦中の南スーダンに派遣している。

南スーダンは内戦状態
PKO5原則は崩れている

南スーダンの現状はというと、7月に大規模な「衝突」があり300人近く死者が出たと言われている。日本の報道は当てにならない。現地紙『スーダン・トリビューン』によると、「双方の死者は1000人を超えた」と報道している。これが日本政府のいう「衝突」の記事です。市民の死者は別。稲田防衛大臣はしぶしぶ訪問し、「散発的な銃撃戦、すでに沈静化した。PKO5原則は崩れていない。撤退はさせない」という。
まったく嘘。これまではどんな戦闘があっても、「自衛隊が駐屯しているジュバ市内(国際空港の直近)から離れているから大丈夫」といってきた。7月の戦闘は、宿営地から3キロもない至近距離。そんなところでロケット砲の撃ち合いがあった。最近の報道では、もっと近いところでも銃撃戦があったといわれている。「遠くだから危なくない」といっておきながら、近くになったら「近くでも危なくない」という。
稲田防衛大臣は「散発的銃撃戦であり、落ち着いている」と。しかし、現地紙を見ると「スーダン人民解放軍(政府軍・キール大統領派)は宣戦布告を示唆。大統領は『野党軍を粉砕せよ』といっている」と報じている。一方、野党軍・マシャール元副大統領派も「政権への武力抵抗」を呼びかけ、「不正な政権に対する宣戦を布告」といっている。お互いが宣戦布告しているという事態。日本政府の答弁とはまったく違う。
7月の戦闘における対応が悪かったと、オンディエキPKO司令官(ケニア人)が国連の手で解任された。ケニア政府は責任転嫁だと怒って部隊を引き上げた。混乱の責任を取ってケニア人司令官を解任した事務総長代理が辞任した。英国、ドイツ、スウェーデン、ヨルダンなどは派遣していた文民警官を国外退避させた。いまやPKO組織自体が崩壊しそうなほど混乱している。
こういう状態で「駆け付け警護」を閣議決定するという。先日テレビで市民、NGOを助ける「駆け付け警護」らしき訓練映像を流していたが、あれはおかしい。もともと「他国の軍隊を助ける」と導入された条文であり、市民救出が対象ではない。

「正当防衛で駆け付ける」というウソ

内閣が策定した「国際平和協力業務実施計画」にもとづく「南スーダン国際平和協力隊の設置等に関する政令」には市民を守る任務は含まれていない。つまりそういう任務が与えられていない。
武器の使用という面から見ても、市民を守ることが想定されていない。自衛隊が武器使用を許されるケースは、PKO協力法に規定されている。1つは自分や同僚、自己の管理下にある者の防護。2つ目は宿営地防護、施設内に外国軍部隊がいたら、それも防護する。これは「駆け付け」ではなく、自分の居るところが襲われたら守る。3つ目に「任務妨害の排除」というのがある。前述の通り市民防護の任務を自衛隊は付与されていない。
最後にPKO関係者の防護。「駆け付け」警護に当たるのは、この条項だ。PKO関係者というのは、PKOをおこなっている他国の部隊、あるいは参加している国連職員。こういう人たちを守るという。日本のNGOなどはPKO活動じゃないから該当しない。だから自衛隊は市民を守る権限を持っていない。
では他国の部隊を守るというのは、どういうことか。これまでPKOで「駆け付け」警護がおこなわれたのは1回だけ。1993年のソマリアPKO、モガディシュの戦闘のとき。参加したのはアメリカ軍特殊部隊。米軍の陸海空特殊部隊が、武装組織の幹部を「逮捕」するために出動し失敗、逆に包囲され孤立した。そこで「駆け付け」部隊が救出に行き、さらに包囲されもっと大きな損害を受けた。行ったのは山岳師団、パキスタン軍、マレーシア軍。結果は米軍18人、マレーシア軍1人の19人の戦死者と負傷者73人。負傷といってもちょっとしたケガなどは入らない。銃創、砲弾の破片などによる重傷。参加した160人のうち半数を超える92人死傷、戦闘ヘリ2機を撃墜され、車両多数が破壊される大損害を被った。
そもそも完全武装した軍隊が「救出を要請」してくるのだから、ものすごい戦闘に決まっている。この作戦に失敗した翌年、米軍はソマリアから撤退した。その翌年は「米軍がいないのでは、どうしようもない」と国連PKO部隊が全部撤退した。

自衛隊は、対応できる装備、能力を持っていない

こういうことを自衛隊にやらせようということ。では、何ができるか。いま派遣されている部隊は施設部隊が中心であり、戦闘部隊ではない。道路工事などを受け持っている。先日のテレビでは、実態は隠しているといわれているが、盾を持ってやっていた。車両は軽装甲機動車、銃弾は防げるが対戦車ロケットにはひとたまりもない。NGOらしき人を救出するシーンも、車両は弾を防げないホロ付きトラックだった。
その自衛隊が戦うことになるかも知れない相手は戦闘機、武装ヘリ、戦車、大砲を持っている。立ち向かえといわれる自衛隊の装備は機関銃5、小銃297丁、拳銃84丁程度である。武器を使うことに、みなさんは反対でしょう。しかし、武器といってもこの程度。戦闘職種である普通科部隊の隊員を送ってもこれでは何もできない。それどころか、自らも守れない。
もし撃たれたらどうするのか。防衛省は、派遣自衛隊員に個人携行救急品を支給している。包帯、止血帯、ガーゼ、人工呼吸シート、チェストシール、ハサミ、手袋。これだけ。痛み止め、消毒薬すらない。
他国の軍隊はどうか。直後の救命に必要な救急品、薬品を支給している。戦闘現場では、直撃されなくても至近距離に着弾したとき破片や石、砂が飛んでくる。そのためゴーグルが標準装備されている。派遣自衛隊にはない。隊員が自費で購入すると「余計な装飾品だ」といわれる。衛生隊員が準看護師資格だと緊急手術はもちろん痛み止め注射、気道確保もできない。
もともと自衛隊は専守防衛が建前だから「戦場」は国内にということになる。後方に移送すれば病院で治療ができる。それを前提に救急体制を考えていた。南スーダンでは、どこまでさがっても病院はない。医官が3人行っているが、手術ができる医師がいない。これでは、助かる命も殺される。防衛省ホームページを見ると、「米軍並み携行救急品の全隊員装備には13億円かかり、現実的でない」と書いてある。1機100億円のオスプレイはポンと買う。こんな防衛省のもとで自衛隊員は新任務を命じられる。(つづく)

どろ・のりかずさん 1954年、姫路市生まれ。中学卒業後、陸自少年工科学校を経て自衛隊員に。自衛隊をやめてからは会社経営など。安倍政権による自衛隊員の命をかえりみない戦争法などの一連の攻撃にたいし、『安倍首相から「日本」を取り戻せ』(かもがわ出版)などと積極的に発言している。

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